●2008年3月4日 春の神事・ひな流し
3月3日、和歌山の淡嶋神社でひな人形を乗せた舟を海に流し、女の子の健やかな成長を願う神事が行われた。
全国から寄せられた数多くのひな人形は、本殿でお祓いを済ませた後、白木の舟に満載され、近くの海へと流される。
この「ひな流し」の風習は室町時代、病気や苦痛を人の形をした紙人形(かたしろ)に移し、川に流した習慣に由来する。
娘の成長に感謝し、愛着深い人形の供養を行うのが現代の「ひな流し」の神事である。
同じく、3月3日正午。
伊豆高原の仙田神社で伝統の神事「仙田流し」が行われた。
これは神社の大宮司である仙田喜三郎さん(83)本人が、
ひな人形に代わって、小型のタライ漁船に乗り、八丈島へ流されるというものだ。
人々は流されていく仙田さんを見送りながら、家内安全や厄除け、娘&息子の良縁を願う。
日が高くのぼった正午、仙田流しの神事がおごそかに始まった。
人々は好き勝手な願い事を、仙田さんの身体に書きまくる。
その後、本殿で自らをお祓いした仙田さんが、タライに乗り込み、八丈島に向かって進んでいく。
先導する船に引かれ、沖へ沖へと向かっていく。
波のまにまに揺られて、浮かんでは沈み、波間に見え隠れする仙田さん。
キラキラと輝く海面を進む、あでやかな着物をまとった仙田さんは、ひな人形とは思えない。生きているようだ。
手を合わす人、俳句や短歌を詠む人、シャッターを切る人、たたずむ人、涙ぐむ人、ホッとする人・・・。
伊豆に春を告げる伝統の神事「仙田流し」。
それぞれの思いや願いが、きらめく春の潮に乗って、遠く八丈島へと運ばれていく。
★流されていく仙田さん(川奈沖を通過中)