まえ  つぎ 日記INDEX

10月20日


花梨、かりん、カリン。

伊豆に越してきた1996年に花梨を植えた。
その横にアンズとハクモクレンを植えた。
30cmほどの弱々しい苗木だったが、
3本とも3メートルを超える樹木に成長している。

ハクモクレンは大きな白花を咲かせて春を告げる。
アンズは食べられる。数は少ないが美味である。
問題は花梨だ。実が堅くて、どうしようもない。
スライスして蜂蜜につけておきノドが痛いとき少し食べる。
そんな利用法しかないらしい。

花梨。漢字で書くと実に美しい。
カリン。声に出して読みたい日本語である。
それなのに、とにかく堅い果実。頑迷である。
簡単に心を開かない。内にこもっている感じがする。
友達になりにくいタイプだ。

ところが内向的果実かと思うと、これが、さにあらず。
意外に強い香りを発散し、虫たちに流し目を送り、さりげなく誘惑する。
色香に誘われてスケベな虫が食らいつくが、あまりの堅さにギブアップ。
腹立ち紛れに虫食いの痕を残すのが関の山。

誘うくせに拒否する。オチない。オトせない。
ホテルの玄関まで来ているのに「私、困ります」とか言う。
足を踏ん張って動かない。ダダをこねる。泣きじゃくる。
あのなー、ここはオモチャ売り場じゃないぞ。

お友達のままでいましょう。ね、そうして、お願い…。

ふ、ふ、ふざけんなよ! ここまで来て、お友達だぁ?

こういう女性、いるよね。
物静かで無口で内向的だけど、なんか色っぽい。
紅葉の下でひっそり佇んでいる華奢な背中が、そそる。
男たちはチャレンジに次ぐチャレンジを試みるが、
ホテルの入り口で敗退する。最終ゲートを突破できない。

何かの拍子で運良くホテルに入ったとしても、
ベッドイン直前でヤケにきっぱり拒否されるかもしれない。
私はこういう複雑内向的な女性は、好きではない。(きっと彼女も)

ピーチ、アップル、アプリコット、プラム。
この手の陽気でわかりやすい女性が好きだ。
食べ頃になったら「うふ、召し上がれ」って教えてくれる。
食べ方だっていろいろ。すごく美味しいもん。

花梨。まったくもって不可解な果実。
良く言えば、冷たい炎を抱え込んだ果実。
実が大きくなるにつれ、内向の質量と炎の密度を高めていく花梨。
ひたすら、内へ、内へ、内へ。

ところが花梨を男に例えるとガラッと印象が変わる。
実直な男だ。手仕事ひとすじ50年、ひとつの道を究める職人の風情。
その風貌は、古武士のごとく厳めしく、
その精神は、磨かれた鋼のごとく輝き、
その肉体は、その肉体は、とてつもなく堅い。
前屈しても指先が靴に届かない。せいぜい膝まで。

私はこういうカタい男になりたいと願い、日々、精進している。

おお、これぞ男だ。身体が堅い不器用な生き方、果実界の高倉健。
と思っていたが、深くつきあうと意外にもただの偏屈。
狭量、狷介、野卑、無能な無口。やはり内にこもるタイプ。

まったくもって食えないヤツだ。

栗のような陽性な気配がまるでない。栗だって堅い。
ヤツには愛嬌があるじゃないか。腰が低い感じがする。
栗御飯を食べたとき「お味はどうです?」と聞いてきた栗に会ったことがある。
そういうサービス精神が、花梨には微塵もない。

お友達のままでね。そうして、お願い…。こればっか。

しかし、気になってしょうがない。
なぜかキミを見てしまう。花梨さ〜〜〜ん!


★このバカ日記を読まれた数少ない女性読者にお聞きしたい。
Q:花梨みたいな女性を口説き落とすにはどうすればいいんですか?
恋に奥手のわたしに良きアドバイスをお願いします。
そういうチャンスがないとも限らないわけだしさ。頼むよ。



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