まえ  つぎ 日記INDEX

10月29日


伊豆高原、冬の入り口へ。

すっこ〜んと抜けた透明感のある空は、どこまでも高く澄み、
グイグイと秋が深まるにつれ、空気が軽くなっていくのがわかる。
光りは淡く輝き、風は弾みをつけて、落ち葉とともに舞い踊る。
ほんとうに気持ちの良い季節。ふんわりした伊豆高原の晩秋。

伊豆の海から天城山へ、じんわりじんわり這い上がってくる、
南東斜面特有の湿気とは、しばらく、おさらばだ。
10月下旬の伊豆高原は、お肌さらさら。いまが絶好です。

そんなわけで今回は写真日記で、ちょいとお茶を沸かしておきます。
濁したお茶は、まずくて飲めないからね。利休。

その後のホワイトガーデン。バラが消えたあとの区画には、
ブラックペッパー、ペパーミント、ベルガモット、セージ、タイムなど、
どうでもいいようなハーブを植えてごまかしてある。

先日、八重咲き水仙、ラナンキュラス、オーニソガラムを空いたスペースに植えた。
それでも何か物足りないので、急遽、白のアネモネをこれでもかと追加しておいた。
すべて球根なので見た目には何にも変わらない。土が見えるだけ。
来春、ここは緑のハーブと真っ白な花たちが渾然一体となって咲き誇り、
おーい、春だぞー、寒がってないで庭に出てこいと騒ぎ立てるだろう。

球根は種類ごとに植える深さが違う。水深ならぬ土深。
水仙の球根はバカでかいので深さ15-20cm。
ラナンキュラス、オーニソガラムは10cm。
アネモネは1cm。球根を地面に軽く押し込んで土をかぶせておくだけ。

ぐうっと土中深く潜り込んで冬をやり過ごす水仙。
完全な暗闇と凍らない土の中で深い眠りを貪る。球根の冬眠だ。
一方、きりっとした冷気や霜や気まぐれに降る雪を感じながら春を待つアネモネ。
つねに冬の光りを感じながら浅い眠りをつづけるアネモネ。
それにしてもかぶせた土が1cmとは。そんな薄いフトンで大丈夫か。
アネモネ、風邪ひいても知らんぞ。

●参考までに植え込んだ球根に付いていた写真を添付します。
来春はこんな花たちをお見せできると思います。


花をつけない背の低い植物で構成したコーナー。
一年を通じてここは清楚、淡麗、静謐。シブい大人の場所である。

と、思ったら小さな白花が、ぽつりん。オキザリスだ。
3年ほど前に植え込んだものだが、すっかり忘れてしまい、
クローバーに似ているので雑草と勘違いして根こそぎ抜いたはず。
今頃、なぜ、咲くのか。ここは約束の地なのか。可愛いやつだ。パチリ!

先日、富士山5合目までドライブしたときのスナップ。
紅葉は期待していなかったので、びっくり。
撮影地点は、標高1800m、気温6℃。空気が薄い。
来年はここで高地トレーニングをしよう。
もしかしたらアテネに間に合うかもしれない。

アテネに、来てね。  そりゃ、アタミか。

これはウチの唯一の紅葉。垣根の常緑レッドロビン。
次々と赤い新芽を出すので正確には紅葉とは言えないが。
緑と赤は庭のサブテーマカラーでもある。イタリアっぽいから好き。

伊豆高原で美しい夕焼けが見られるのは稀だ。
空気が澄みはじめる秋は夕焼けの季節でもある。
遠慮がちな淡い薄桃色が高原の秋を彩る。うっとり。


同じ伊豆半島でも西伊豆には数々の夕焼け鑑賞ポイントがあるが、
反対に私が住む東伊豆は迫力ある朝焼けが見られる。
天候の崩れを空一面で予告するかのような禍々しい色合い。
不気味な感じさえする。食べ過ぎた朝はとくにそれを感じる。

そりゃ、胸焼け…     だ。


我が家のペット。ふくろうのフクちゃん。オス15歳。
梟なんて書くと可愛げがない。フクロウ、ふくろう、だろう。
ウチは3人ともバカなので「知恵の勇者フクロウ」が家にいれば、
少しは賢くなるかもしれないと思い15年前に買った。
なかにローソク立てがあり、灯りつく仕掛けになっている。

買ったばかりの頃、おもしろがって火を灯したが、そのうち飽きた。
フクロウのお腹の中には蝋の残骸が脂肪のようにへばりついている。
餌やり不要、病気知らずのフクちゃん。バカ家族の守護神である。
フクちゃんが入っているのはバカ妹のパッチワーク作品である。
彼女は「福ろう袋」と呼んで自画自賛している。



昨夜から伊豆高原名物の強烈な西風が吹きはじめた。
天城からの吹きおろしは、どーんどーんと壁にブチ当たってくる。
強風の体当たりは、ちょっと恐ろしい。

最初に書いた「ふんわりした伊豆高原の秋」は、
風力計をもなぎ倒す西風に一瞬で吹き飛ばされてしまい、
否応なく冬の入り口に立たされる。

夜間飛行の航空機が伊豆半島上空を通過していく。
赤色は右舷灯、緑は左舷灯、白のフラッシュライトが尾灯。
西へ、東へ、ひっきりなしに行き交う。

さらに目を凝らせば、夜空もまた秋から冬へと変化しているのがわかる。
ペガサス座の4つの星が形作る、秋の傑作「大四辺形」に代わって、
ひときわ大きく輝く一等星ペテルギウス、シリウス、プロキオンが、
「冬の大三角形」を作りはじめている。極上の3つ星。真冬の贈り物だ。

夜間飛行の灯火が大三角形の中心をくぐり抜けるとき、
シリウスが煌々と青白い炎を燃やすとき、
伊豆高原の冬が、はじまる。



まえ  つぎ 日記INDEX

inserted by FC2 system