まえ  つぎ 日記INDEX

6月13日


すごく、いい話だ!

先日の新聞記事が忘れられない。いわゆる暴力系ヤの字業界人の話である。
記憶に残ってる人もいると思うけど、まるで私が現場にいたかのように報告したい。

新幹線に乗り込もうとする組長と子分(すごく若いよ)。
列車の出発が迫っている。早足で階段を駆け上がる。ホームにベルが鳴り響いている。
遅れそうだ。ところが何を思ったか組長、キヨスクで週刊誌を買う。
早くしてください!。叫ぶ子分。

組長は週刊誌をじっくり選ぶ。「文春」「新潮」「ポスト」「現代」「週刊女性」。
迷った末に「週刊大衆」を選んだ。これで間に合う。子分、ホッと胸を撫で下ろす。
ところが組長、キヨスクにとってかえして「みやこ昆布、あるかい?」
駅員のアナウンス。白線の内側にお下がりください。まもなく発車いたします。
クミチョー、早くしてください。子分は乗車口に立ち、大声で呼びかける。

あ、ドアが閉まり始めた。万事休す。ふたりは新幹線に乗れない…。アウトだ。
しかし、そう思うのはシロート。話はここからだ。

「酢昆布」を食べたい一心の組長を慮って(おもんぱかって・読めたかい?)、
若者子分、なんと閉まってくるドアに強引に片足を差し込む。
エレベーターのドアは異物を関知すると再び開くが、新幹線は閉まり続ける。
定刻出発が自慢の新幹線。何があろうと出発したい。ドアだって負けてはいない。

むりに挟んだ足をギリギリと締め上げる。子分だって負けない。組長、早く、早く!
ドアが完全に閉まらないと警告ランプが点灯して列車はスタートできない。
うー、痛い。イテー、イテーよう。ものすごい油圧で足を締め上げる新幹線。
こうなったら一騎打ちだ。どっちが根性あるか、徹底的にやるぞ。
俺だって負けないもんね。ドアと子分の対決だ。

ドアに足を挟まれたまま苦悶の表情を浮かべる子分を見て、こんどは組長が加勢する。
ふざんけんじゃねーぞ、この野郎。組長、思い切りドアを引っ張り力づくで開けにかかる。
すでに定刻出発より5分も遅れている。激痛が襲う5分間。若いのに根性があるヤツだ。
見送り客数名が若者に声援をおくる。ドアになんかに負けちゃダメ。ファイト!
もしかして若者の足はすでに軟骨が何本か折れているかもしれない。
でもガンバル。ドアに負けない。

ようやく不測の事態を察知した駅員が駆けつけてくる。
運転手に知らせドアを開けさせる。ふー、助かった。
ほぼ10分遅れで新幹線は出発したが乗り込んだのは「酢昆布」大好きの組長のみ。
例の若い衆は鉄道警察にこってり油をしぼれらた。
若いの、よくやった。いまどき社長のために、そこまでする社員はいないぜ。
身体を張って仕事する人間、いま、いるかい?

以上、2番線の現場から。



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