まえ  つぎ 日記INDEX

7月28日


空を飛ぶアリ・不思議な庭の物語。

庭のあちこちにアリがいる。
花々に特に害はないのでそのままにしておいた。
ところが大切にしていた木香バラの枝に這い上がり、
次々と柔らかな葉を食べている。これは見逃すわけには行かない。

申し訳ないがある薬剤を使用して除去することにした。
ほとんどのアリは消滅、またはどこかに消えた。
ところが一匹だけしつこくバラの枝にしがみついている。
一匹だけのために薬剤を使うのもシャクなので、
狙い澄ましてそのアリを指でピンと弾き飛ばす。
痛烈なデコピンである。ものすごく痛いぞ。

これでたいていの虫は気絶するか昇天する。
私は一寸にも満たないが五分の魂を持つ虫を殺したことに
少し後ろめたく思いながら、水道で「虫殺しの人さし指」を洗っている。
と、こうなるはずだった。普通は、こうなる。

ところがそのアリは、私がピンと弾くその瞬間、
0.0005秒寸前に、飛んだ!
強烈なデコピンをかわしたのだ。なんとアリが飛んだのだ。
決して強風に流されたとか、そういうことではない。
もちろん羽アリではない。由緒正しい地上を歩くクロアリだ。

それが空中を飛んだ。
その証拠に約2メートルの垣根を楽々と越えて、
さらに30mほど離れた隣の空き別荘の屋根に
ピタッと着地しているではないか。

あまりの素早さに私は見逃してしまったが、
たぶん、空中では後方エビ反り5回転半ヒネリ
フリップフラップ・ジャックナイフ型
ウルトラD難度の超美技を見せてから着地したのではないか。
審査員オール10点! 観客、スタンディング・オベーション!

そのアリは屋根の上から私を見てニカッと笑った。
不敵な笑いだった。そして、アリは私に言った。
いいか、俺様が薔薇の葉をすべて食い尽くしてやるぞ。
俺にだって生活があるからな!

私はこの名もなき上海雑伎団のアリを、
次回アテネ五輪体操選手代表に推薦したいと思う。

そして「俺にだって生活があるからな!」という言葉を良しとしたい。
あのアリは女王アリに仕えて一生を終えるような、
奴隷のような受動的な生き方しかできない惨めなヤツではないと信じたい。
自分のために、守るべき家族ために、懸命に働き、生きる男だと思う。

アゲハチョウがスズメをくわえて飛び、
アリが30メートル以上も空中をジャンプする。
ウチの庭では不思議なことが次々と起こる。

by不思議な庭のアリス



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