まえ  つぎ 日記INDEX

8月01日


極上のイタリア

ケンカは弱いくせに、洒落者で、クチ達者。

洋服や家具など中国風のものをシノワズリー(Chinoiserie)と言う。
確かに英文スペルの中には「China」の文字が入っている。
シノワズリー。声に出して読んで欲しい。語感がすごく気持ちいい。
言葉の中から大陸の風がフワーっと吹いてくるようだ。

だが、しかし…

私が最も好きな国はイタリアである。なぜか、昔からイタリアが好きだった。
「明日の米より今日の恋!」などとホザいてる国民性が好きなのか。
あるいは世界一の美的センス、成熟した芸術文化に惚れ込んだのか。
とにかく私の中ではイタリアは「日本一」すごい国である。

第二次大戦。日独伊の三国同盟。いち早く白旗を揚げたイタリア。
ドイツはともかくイタリアなんかと組むから負けたのだ。
年寄りのそんな虚しい繰り言を聞いたことがあるが、
私は、超弱腰のイタリアと手を結んでいたことが嬉しかった。

ケンカは弱いくせに洒落者でクチ達者。ナンパの腕は超一流。いつもご陽気。
クルマもファッションも食べ物も、とことん、こだわる。こだわり抜く。
そして、それらすべてを文化にまで高めていった練達イタリアーノたち。

世界で最も美しい車は、誰が何と言おうと「フェラーリ」だと思うし、
靴はフェラガモが第一級であると信じている。
洋服に至っては名前を挙げていったらキリがないほどだ。

私はブランドモノが良いと言ってるのではない。
単純にモノの素晴らしさを称えているにすぎない。
だってウチはフェラーリにも乗れないし、フェラガモも履いてない。
都会にいた頃はアルマーニだけを着てギョーカイぶっていたが、
現在、そんなものとはまったく関係のない生活である。
ウチは3人とも年間を通してユニクロ・ブランドで統一している。

初夏から晩秋までTシャツ短パン。上下合わせて1900円+1900円である。
しかも色は、すべて黒。黒以外は着ない。
伊豆高原でカラスのような3人を見かけたら間違いなくチーム・ウララカである。

冬は冬でお決まりのフリース一辺倒。着て、着て、着倒している。
コートやジャケットからボトムまで、すべて黒のフリースである。
冬は重ね着をするので、お安いユニクロでも3800円を超える。豪快なお値段!

10年以上前に「世界でいちばんバカな国はどこか?」を、
詳細なデータを元に検証した週刊誌のアホ記事を読んだことがある。
具体的な内容は忘れたが堂々第一位に輝いたのがイタリアである。
半分シャレでやったことだがイタリア大使館からクレームがついた。
大好きなイタリアらしくもない。大人げない行為だった。少しガッカリした。

バカ世界一。大変な名誉ではないか。なぜ文句を言うのか理解できない。
私は「バカである」は、最高の誉め言葉だと信じている。
世の中には、「ふつう、利口バカ、バカ」の3種類の人間がいる。
もちろん最高位は「バカ」であり、最低の最低は「利口バカ」であろう。
そして、ほとんどの人は、私も含めて「ふつう」である。

私は、なんとか今の自分を突き抜けて「孤高のバカ」になるべく精進している。
だがその道は険しい。果てしなく遠い。永遠に辿り着けないかもしれない…。

思い出して欲しい。バカ・イタリアーノが住むあの国は、
昔、昔、古代ローマ帝国と言われていたのだ。親分はシーザーである。
ドメスティックな我が親分・徳川家康とはケタが違う。スケールが違う。
シーザーの血が流れているイタリアーノは、
もしかして本気でケンカしたら、ものすごく強いのかもしれない。

いや、やっぱ、そんなことないな。世界征服を目前にして、
ヤツは絶世の美女クレオパトラの色気にコロッとやられたんだもの。
ここがイタリアーノの悲しいサガだ。大切なときに何してんだよ、シーザー。
世界征服なんか、つまんない? そんなものより美女との恋か? 

大バカもん!

中国風=シノワズリーとは、まったく語感が違う「陽気なイタリアン」。
どうしてどうしてバカにできない芸術王国ではあるが、
その言葉の中には、とびきり極上のバカっ風が吹きまくっていると思う。



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