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●お通夜の芸人:ご愁傷様
お葬式のご挨拶なんですが。ま、お通夜でもいいけど。 この度はご愁傷様でございます。さぞかしお力落としのことと存じますが・・・・。 普通はこのような紋切り口調で喪主に深々とお辞儀をしながらご挨拶。 ところが葬儀のプロに聞いた話によると、これはイカンらしい。 いくら沈痛な面もちでもあっても意味明確に挨拶をされると、 喪主は何かを言い返さなくてならない。返礼の言葉を述べたくなるものらしい。 どうも、遠いところをお運びいただきましてありがとうございます。 生前は故人が一方ならぬお世話になりまして・・・。 葬儀のプロは言う。 喪主はただ黙って哀しみに耽り、 参列者の哀悼の辞にも無言で半ば上の空で頭を下げるのみ。 言葉少なに粛々と進行する葬儀。 線香の匂いに溶けこむような悲しみのすすり泣き。 これが理想だという。 ● では、参列者はどのように挨拶すべきか。 要諦は滑舌鮮やかな挨拶は慎しみ、意味不明な文言を低い小さな声で言う。 つまり、 このたびは、白足袋、黒足袋・・・・なことで・・・ むにゃむにゃむにゃ・・ ● 葬儀参列のプロは「白足袋、黒足袋」を繰り返すらしい。 何を言ってるのか意味不明だが、なかには感極まって泣き出す喪主がいるという。 表情は半泣きに近い涙目。挨拶直前に思い切り力を入れて目をつむる。 すると、たちまち目は真っ赤っか。泣きはらし目の完成です。 大企業総務課ひとすじ30年。祝儀不祝儀のプロはすごいらしい。 遠目に見ても彼の背中には、哀切の情が充ち満ちているという。 深い深いお悔やみの情、鎮魂の「白足袋、黒足袋」。 それは「挨拶の芸術」にまで昇華されていると葬儀のプロが語ってくれた。 どこにもプロはいるもんだ。 さあ、練習しよう。 このたびは、白足袋、黒足袋・・・・なことで・・・ むにゃむにゃむにゃ・・
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