|
●8月20日(水):神田にショッピング? 地元の若い友人から聞いた話ですが、先輩諸氏のみなさん、本当ですか? 伊豆のご先祖様は、お盆になると東京は「神田」に買い物に行くという。 なぜ、神田なのか? 何を買うのか? わかりません。 しつこく聞いても相手は若いので納得のいく答えは返ってこない。 「とにかく、昔からそうなんだから」。この一点張り。まったく要領を得ない。 ● お盆。ご先祖様が、生前、楽しく暮らしていた自宅に帰ってくる。 あー、やれやれ。やっぱ、家がいちばんだなー。二泊三日の旅行帰りか? じーさんの先祖・徳三郎は、物珍しそうにあたりを見回す。 この家も随分変わったな。お、全自動洗濯機! 食器洗浄乾燥機! お尻も洗うのか! ワシが生きていた頃は、洗濯も食器も身体も川で洗ったもんだ。 晴れた日には、でかい桃が流れてきてよー。どんぶらこ、どんぶらこ、とかね・・。 ばーさんの先祖・フネさんは、相変わらず手厳しい。 ふーん、ラクになったもんだ。これが明るい文化的生活ってやつかい? これじゃ、嫁が太るわけだ。昼間っからテレビ見て、お菓子食べて、いいご身分だこと! あら、幸子さん! ここにホコリが! お掃除、ちゃんとしてる? あれま、汚れた食器が山積みじゃないの! なに、その肉付きのいいタイコ腹は! 二の腕ぷくぷく。どうにかしなさいよ、みっともないねー! あー、やだやだ、ウチの嫁は!(ちなみに生前のフネさんの体重=74kg) ● 先祖霊のスケジュール。 13日・帰宅。仏壇には、お赤飯のおにぎり+お小遣い(買い物用)、果物、供花など。 14日・神田にお買い物。やはり目的は古本だろうか。あるいは銭形平次のお宅訪問か? 15日・混み合う東京で遊んできたので休養日。完全OFF。桃やスイカを食べて昼寝。 16日・再び、お墓に帰る。これにて盆行事は終了。ナムアミダブツ。 この間、生者は毎日、霊が道に迷わないように、 夕暮れになると玄関で小火を焚き、大きな盆提灯を灯しつづける。 これが伊豆の習わし。地元在住の友人(28歳)より取材。 ● 私も、妻も、両親は他界しているが、墓が遠いこともあり、 お盆だからといって、とくにそれらしいことは何もしない。 故人の写真立てに積もったホコリを払い、白い花を飾るくらいだ。 天気が良ければ、深夜、天城山へ出かけて星を眺めたりする。 自分の好きな星を両親に見立てて手を合わせるのだ。 今年は大雨つづきで、そんなことも叶わなかった。 ● 祖父、祖母、父、母。そのほか大勢の霊となりし親戚縁者たち。 何日も、何日も、覆い被さるように天城山に居続ける雨雲の向こう、 晴れ渡った銀河の彼方には、懐かしい人々がいっぱいだ。 忘れられない記憶の数々が蘇る。楽しかった想い出は、まさに星の数。 あの人も、あの人も、そして、あの人も…。 きっと、私たちを見て笑っているに違いない。そう思いたい。 お前たち、元気ならいいさ。元気なら、それでいいよ。 庭に咲いていた白い星。敬愛する祖母、父、母かな? 3人はどこに買い物に行くんだろう? 日本橋高島屋? それともパリのどこか? ついでに食パンも買ってきて下さい。明日のパン、ないんです。とほほ。
|
|