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●稜線の向こう側 04.1.11
写真のような稜線を見ると、その向こうに何があるのか。 どんな風景が広がっているのか。遮二無二見たくなる。居ても立ってもいられない。 たとえ道がなくても「向こう側」を見るために突進してしまう。 夕陽を浴びて赤く染まった丘。天地を厳然と分かつ訳知り顔の稜線。 向こう側にはどんな人がいるんだろう。
愚にもつかない人間やモノがまとわりついて、がんじがらめになって、 息苦しいシバリを振りほどくために生活を一変し、 ムリを承知で小さな魂を磨くために過疎地へ転居し、 生活に支障のない軽度な病を背負い込むがさして苦にもせず、 思うように明日へ跳躍できずにいてもジャンプ台の手入れだけは怠らない。 震えつづけるヤワな心ではあっても、そんなことはオクビにも出さず、 毎日を闊達に堂々と笑いながら生きている。 この名もなき丘を越えた向こう側に、そういう人が必ずいるはずだ。 会いたいと思う。そして、言うのだ。 お前は、オレか? 振り返ると夕陽。 万物に生命の輝きを遍く注いだ太陽がそそくさと店じまいをはじめる。 昼と夜が束の間鬩ぎ合い、昼は闇のふところに静かに潜り込む。 赤と黒がもつれあい絡まり合って世界に黄金の祝福をもたらす。 今日といういまをしっかり生きたかと問う夕陽。 慰撫の力をもってすべての人間を賞賛する夕陽。 死者を黙殺し生者を実在する未来へと導く夕陽。 さあ、家に帰ろう。
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