●10月6日 スクランブル交差点
いやー、めでたい! ついに我が町にもスクランブル交差点ができた。
伊豆半島には大小さまざまな市町村があるが、
スクランブル交差点があるのはここだけだ。
つまり、伊豆半島初の快挙!
横断歩道の歴史に新たな1ページが刻まれたのである。
完成祝賀式では、市長をはじめ町の有力者が厳かに渡り初めを敢行した。
つづいて市民たちがオドオドと渡りはじめる。
みんな、よそ行きの服装である。
交差点を斜めに渡っていいとは! 初体験! 初夜みたい!
すごい! 生きていて良かった!
フラッシュがたかれ、風船が飛び、ハトが飛び、
紅白のモチが飛び、ファンファーレが秋の空に響き渡る。
おじいちゃん、斜めに渡ってもいいんですよ、と婦人警官に促されて、おじいちゃんが歩き出す。
大地を踏みしめながら、ゆっくりゆっくり斜めに歩き終えた、おじいちゃん(★)は言う。
ワシの歩幅は狭い!
もとい
ワシの一歩は小さいが、人類にとって偉大なる一歩だ!
スクランブル初体験の市民たちは、みんなニコニコ笑っている。
伊豆半島のみなさま。スクランブル交差点を渡ってみたい人は、いますぐ伊東へどうぞ。
10月中は青色信号の点灯時間が少し長くなっています。斜め横断をたっぷりお楽しみください。
交差点を真四角につないでいる横断歩道に、新しく2本の斜め横断歩道が追加された。
愛のタテ軸と夢のヨコ軸を、希望という名の2本の対角線が結ぶ、感動のスクランブル交差点。
交差点の向こうに輝かしい伊豆半島の明日が見えたのは私だけはあるまい。
映画館がなくても、ミニシアターがなくても、スクランブル交差点がある。
私は、この町をヒイキにしようと思う。
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補足:おじいちゃん(★)は、観光遊覧船「あぽろ11号」の船長である。
いつも鼻歌を歌っている。ふらい・みー・とぅ・ざ・むーん♪