●11月13日 山梨・信州旅行
山梨&信州へ一泊ツアーに行ってきました。
一日目は松本&安曇野を巡り、二日目は山梨の昇仙峡で紅葉を愛でる。
そこ以外にもあちこち走り回り二日間で約800Kmを走破した。
何十年ぶりに松本城を見学し、友人おすすめの「TOBIRA」で昼食。
安曇野まで足を伸ばして噂のケーキ屋さん「ガルニ」を探すが辿り着けず断念。
宿泊は山梨のフルーツパーク富士屋ホテル。
ここは高台にあってものすごい夜景が一望できることで有名だ。
新日本三大夜景のひとつ。
最上階の部屋から眺める夜景は実にみごとだった。光りの海、たゆたう。
ただし、このホテルから夜景をとったら…。宿泊料の75%は夜景代であろう。
●
一日目はカラリと晴れていたが、二日目は濃い霧が湧いて、いまにも降り出しそう。
それでも昇仙峡めざしてひた走る。途中、ミレーの絵画で有名な山梨県立美術館へ寄る。
女子高校生の団体が大勢いる。お、ナマ足じゃん♪
時間が余ったのか80人くらいの女生徒が地べたに座り込んで休憩していた。
みんながみんな携帯を食い入るように見つめてメールのやりとりをしている。
彼女たちが重要なのは絵画よりメール。
チェックしたいのは「種を蒔く人」よりも携帯の画面。
●
昇仙峡は紅葉真っ盛り。
ほとんどの観光客は不思議な形をした奇岩巨岩に歓声をあげながら、
渓谷を彩る色とりどりの木々を眺め、のんびり川沿いを歩くのだが、
私たちは雨模様だったので細い道を強引にクルマで遡上した。
昼食をどこで食べるか考えてなかったので、車道どんづまりの蕎麦屋に寄った。
きのこ蕎麦を注文した。他に食欲をそそるようなメニューはない。
しばし、蕎麦が来るまで湿った座布団にすわって紅葉を眺める。
渓流沿いの店なので、全体がじめじめ、じっとり。やだなー。
店内は(実際は外だけど)けっこうな混みようである。
と、
目の前の夫婦が店のオバサンを呼んで問いつめる。
ほうとう、まだ? 30分も待ってるけど。
おお、山梨名物のほうとうを注文したのか。人気メニューだから時間がかかるらしい。
ほうとう? あ、ごめんね。いま、持ってくるから。
5分後。
お待ちどおさま。はい、きのこ蕎麦。
いや、きのこ蕎麦じゃなくて、ほうとう! さっき、ほうとうって言ったじゃん!
え、ほうとう? ほうとうにゴメンね、なんちゃって! がはは。
オバサン、全然悪びれない。この世のものとは思えないダジャレまで言って…。
行き場を失ったきのこ蕎麦を持って、
えーと、きのこ蕎麦を注文した人いませんか?
私がすかさず手を挙げようとしたら、3列向こうのオジサンが叫んだ。
こっち! こっちだよ。もう40分も待ってるんだから!
プンプンに怒っている。きのこ蕎麦、40分待ちか?
じゃ、私たちが注文したきのこ蕎麦は、どうなる?
明日か? 雨まで降ってきた。やだなー。
と、
はい、お待ちどおさま。ほうとう!
私たちの前にぼうぼうと湯気立ち上るほうとうが運ばれてきた。
オバサン、これ、違うけど。
え、ほうとうじゃないの? あれー、誰だろう?
すぐ目の前の夫婦が私とオバサンを睨んでいる。強烈な視線、ほうとう視線だ。
ようやくオバサンも気づいて、お待ちどおさま。やれやれ。
みんな表情を曇らせ、メガネを曇らせ、ほうとうを食べはじめている。
何も食べないでぼうーっと雨空を眺めているのは私たちだけだ。
と、
店主らしきオジサンが私を指してオバサンに何やら聞いている。
聞かれたオバサン。こっちを見て自信たっぷりに大声で答える。
あ、あそこ? ほうとう!
それを聞いたオジサンが直接注文の確認に私たちのところに来た。
お客さん、ほうとうでしたよね?
いや、きのこ蕎麦だけど。
やっぱり…。
オジサンはとても哀しそうな顔をして伝票を書き直していた。
7分後。私たちはきのこ蕎麦を食べた。
蕎麦なのに、ほうとうの味がした。こっちまで哀しくなった。
●
かくして短い旅行が終わった。
信州や山梨の空気はとても乾燥している。ノドが痛い。運転中ずっとノド飴を舐めていた。
肌もカサカサしている。笑いじわが目立ってきた。目の下に疲れが出ている。
帰路、山梨御坂峠を越え、富士五湖道路を走り抜け、天城を越えると、
湿潤で温暖な伊豆の空気がクルマに忍び入ってくる。
みるみる身体が潤うのがわかる。ノドの痛みが消えた。水分を欲しがらない。
かつては高燥の地に憧れたが、伊豆の気候に身体ごと慣れてしまったようだ。
どこに出かけても、やはり伊豆が最高だと改めて思う。
●
旅のまとめ:次回は「ほうとう」を食べよう。