ジーサンたちの忘年会は、とにかく話題が豊富で困る。
できれば全会話を録音しておきたいものだ。
やがてコンパニオンが現れると、
「いやーん、ばか♪」「だーめ、そんなことしちゃ♪」「えっち♪」の嵐だ。
さらには旅館のご好意で「本マグロの解体ショー」がはじまった。ここは焼津の魚センターか?
つづいて頼みもしないのに伊東市フラダンス愛好会のおばさんたちが乱入してくる。
化粧をいくら濃くしても、おなかの贅肉は隠せない。肉とシワのハワイアン。
すっかりごきげんになった「ヤングの会」幹部連中がカラオケをはじめる。
ここはおクニの何百里ぃぃー 離れて遠き満州のぉぉ♪ とか、
キサマとオレとは 同期の桜ぁぁぁ♪ とか、
こんにちはぁ こんにちはぁ 世界の国からぁぁ♪ とか、
潮来のいたろうぉぉ ちょっと見なればぁぁぁーー♪ とか、
ベンセイ粛々ぅぅ 夜 河を渡るぅぅぅぅ♪ とか、
あんこぉぉぉぉ ツバキはぁぁーーー とか、
ナウなヤングにふさわしい流行歌が次々と飛び出して、これ以上ないくらいに盛り上がる。
さて、いよいよ本日のメインイベントだ。私の出番である。
8月から密かに猛練習してきた隠し芸を諸先輩の皆様に披露するのだ。オレは堺正章か。
まあ、見てください。これです!
すんません…。
そして、シメはいつものように「ヤングの会・テーマソング」を全員で合唱する。
肩を組んで、身体を揺らして、できるだけ大声で。もちろんフリも付けて。
ヤングマン さあ立ち上がれ
ヤングマン 今翔びだそうぜ
ヤングマン もう悩む事は ないんだから
すばらしい Y.M.C.A Y.M.C.A
隠し芸を終えた私は、すきま風が吹き込む入り口に近い下座から、歌う元気な老人たちを見ていた。
とても頼もしくもあり、むなしくもあり、可愛くもあり。
毎年、歌の最中に興奮しすぎて死ぬ老人がいるが、今年は全員無事に歌い終えた。ほっ。
ゆううつなど 吹き飛ばして 君も元気出せよ
そうさ Y.M.C.A Y.M.C.A
若いうちはやりたいこと 何でもできるのさ♪
●本日の結論:ピアノは指でひくとは限らない。