●12月4日 白いサザンカ
春から秋にかけて庭の手入れができなかった。
垣根にしていたレッドロビンが、いつのまにか病気が広がり、すべて枯れ落ちてしまった。
伊豆に越してきた1996年に作ったレッドロビンの生け垣は、
適度に人目を遮り、季節のうれしい便りや夏の涼風を積極的に迎え入れてくれた。
逆に無法者の野良ネコや野良イノシシ・野良別荘荒らしの侵入を断固として防ぎ、
冬の強風「天城おろし」に敢然と立ち向かってきた勇者レッドロビン。
年に何回も元気良く吹き出す新芽の赤、赤、赤、赤、赤、赤。なんと鮮やかなことか。
緑葉とのコントラストがたらまなくイタリアンで気に入っていた。
●在りし日の勇者レッドロビン
元々、病気には弱いと聞いていたから年に何回も消毒をして大切にしてきたのに。
ま、仕方ない。この際、垣根を総取っ替えしよう。
丈夫で、成長が早くて、安くて、そこそこ見栄えがいい垣根。白花のサザンカにした。
赤花のサザンカがすでに東側と北側をガードしている。
以前、住んでいた人が植えたものだ。私はどうしてもこの赤色が好きになれない。
深みもなければ味わいもない貧相なレッド。安っぽい赤とはこのことだ。
たとえば同じ赤でもこんな赤ならすごく気に入ったに違いない。
この世の地獄を想わせる、濃くて、深くて、苦い、猩々緋。
溌剌として清々しい濃紅色。煮えたぎる冷血スカーレット。
初恋のときめきを油彩で描いたマゼンタ。
真夏の夕陽色、真冬の朝焼け色。
思考の黒と行動の青から生まれた永遠の赤。
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約20メートルの生け垣を白のサザンカで作ると決めたのはいいが、
60本の苗木が揃うまでに少し時間がかかると庭師は言う。
こっちは一刻も早く垣根を作って欲しい。だって道路からウチが丸見えなんだもん。
散歩するばーちゃん&じーちゃんが、じろじろ庭をのぞいて勝手な感想を述べていく。
うるさくて、かなわん! 早く垣根を。早く遮蔽物を。
レッドロビンを抜いて5日後、庭師が助っ人2名を連れてやってきた。
白のサザンカをトラックに大量に積んで。よしよし。これで一安心だ。
と、思ったら。白と赤が半々じゃん! どういうこと?
庭師は言う。
だって、うーさんが急かせるから、白のサザンカが60本も揃わなくて。ごめんね。
赤と白、半分ずつにした。紅白歌合戦垣根。
紅白の垂れ幕おめでとう垣根っての、どうよ?
どうよ?ったって困るよ。その赤、嫌いだし。勝手に紅白にしないでほしい。
しかし、もう遅い。助っ人2名は植え付けを始めている。作業開始!
うーさん、その分、肥料とか手間賃をサービスするからさ。
紅白でいこうよ。ね、ね?
私はこう見えても「サービスする」とか「おまけ」という言葉に非常に弱い。
早く垣根が完成してほしいので簡単に妥協した。仕方ない、紅白でお願いします。
出来上がった垣根がコレ↓。手前半分が白、奥半分が赤。とほほ。
山桃とソテツが紅白サザンカを見下ろして笑っている。
垣根完成の3日後、白のサザンカが咲いた。次々と咲いた。
2004年初冬。新しい垣根に白バラが咲いた。滝のように咲いた。
負けじと赤サザンカも咲きはじめた。咲かなくてもいいのにさ。
こうして我が家の紅白垣根は「あら、変わった垣根だこと」と、
道行く人々に軽いサプライズを与えることになった。
赤と白。もっとも単純で、もっとも明快で、もっともノンキな配色。
ま、いいか。ま、いいさ♪