スーパーの駐車場で1000円を拾った。ラッキー、ラッキー♪　天の恵み。

交番に届けるような「清いモラル」はハナから持ち合わせていない。

へらへら笑いながらポケットにしまいこんだ。ここまでは順調。

抜けるような青空、乾いた空気、さやさや微風、1000円ゲット。

ああ、叫びたいくらいの祝日ナイス・デー！

ところが運悪く現場をバカ妹に見られてしまった。障子に妹メアリー。

天網恢々疎にして漏らさず。網目が粗いって聞いたのに、なんだよ！

そのお金、どうするの？　ねー、どうするの？　妹が脅すように問いつめる。

顔には「何かオゴれよ」とハッキリ書いてある。←ゴシック体ボールド

殺人現場の目撃者、犯人を恐喝するの図。

「火サス」なら恐喝者を真冬の東尋坊におびき出して突き落とすのだが、

1000円ネコババしたくらいで前科者にはなりたくない。どうしよう。

よーし、わかった。オゴろう。太っ腹。

買い物を終えて現場に到着した妻。妹がネコババ事件の一部始終を語る。

事件のあらましを聞き終えた妻が私に言う。

お金は拾わなかったことにしよう。ぱちっ♪（ウインクかい！）

その代わりキミのポケットマネーでドーナツをオゴりなさい。

ほれ、右側のポケットに1000円、あるんでしょ。

宵越しの銭なんか持ったらいかんよ。オゴれ、オゴれ！

イージーゴー、イージーカム！（直訳：悪銭身に付かず）。

5分後。「ミスター・ドーナツ」になだれ込んだ。

私は迷わずお気に入りのポン・デ・リングを選ぶ。誰が何と言おうとこれが好きだ。

さらに「ハニーディップ」を追加した。大人なので2個で十分だ。

一方、恐喝者2名。居並ぶドーナツの大群を前に迷いに迷っている。

握ったトングを牙のようにカチカチ鳴らして、舌なめずり。血走ったその目がこわい。

ショーケースを睨みつけ右往左往の繰り返し。白クマか？

アタマの中ではドーナツ1000円分の計算をしているはずだ。

きょうは全品105円の表示。1000円÷105円＝9.523個。

合計9個のドーナツが箱に収められ、恐喝者2名は各自3.5個を、ぺろり。

ネコババ犯人の私は「ハニーディップ」を食べながら、

これはジョニー・ディップの味がすると思った。