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4月3日:イノシシ徳三郎の伝説

伊豆「いのしし村」。

観光客なら誰もが一度は立ち寄ったことがある、

伊豆半島を代表するナウでヤングなテーマパークだ。

ここのキャッチフレーズが笑うのでご紹介します。

かわいいイノシシを…

 

 見たり 食べたり♪

伊豆には「まいうー・シシ鍋」「魅惑のイノシシらーめん」

「激うま・シシ丼」「仰天!イノシシ丸ごと天丼」等の看板があちこちにあるが、

私はまだ幸か不幸かイノシシを食したことがない。

ましてや、追っかけられたことも、追いかけたこともない。

4月のメインイベントは入学式。夢と希望がいっぱいの新一年生の登場である。

洋服もランドセルも靴も瞳も頬も唇も何もかもが、ピッカピカだ。

入学式。校長先生のごあいさつです。みなさん、静かにしましょうね。

ご入学おめでとうございます。

私が校長の雨森シズクです。瓦職人の家に生まれました。なのに雨森とは、これいかに!

みなさんはイノシシを知っていますか。

十二支の掉尾を飾る動物です。ね、うし、とら、う・・・・・・・さる・とり・いぬ・「亥」

今日は、イノシシのヒーローについてお話ししましょう。

我が町には「猪戸(ししど)通り」というストリートがありますね。

キミたちもお母さんと手をつないで、そぞろ歩いたことがあるはずです。

通りの入り口にはイノシシの像がありますね。

↓これです。

見たことがある人は、手を挙げてください。

男子は文字、女子は文字で。

はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、
はい、
はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、
はい、はい、はい、はい、はい、
はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、
はい、はい、はい、
はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、
はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、
はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、
はい、はい、
はい、はい、はい、はい、はい、はい、は、はい、はい、はい! 

84名、異常なし!(by 学年主任・りょうこ先生)

はい、元気なお返事をありがとう。(↑ひとりニューハーフがいます)



はい、はい!

あ、PTAの会長さんまで……。元気なお返事をありがとう♪

さて、この銅像ですが、みなさんは由来をご存知でしょうか。

実はあの銅像になったイノシシは田畑を荒らしまくるような悪いイノシシではありません!

通信簿がオール「3」で給食のときだけ活発なコになる、そんなイノシシでもありません!

体育だけが「5」で夏休みのラジオ体操は無遅刻無欠席、元気だけが取り柄のイノシシでもありません!


うぉっほん! みなさん、お待たせしました。

それでは銅像のモデルになった「イノシシ・徳三郎」についてお話しましょう。

むかーし、むかーしのことじゃった。

伊豆のとある山奥に、それはそれは元気なイノシシがおってな。

毎日、毎日、毎日、野山を走り回っておったそうな。

ある日のことじゃった。若いイノシシは、突然、海が見たくなったんじゃと。

いつもいつも山ばかり眺める平凡な暮らし。こんなの、つまらん! 世間を見る目が視野狭窄!

そこで思い切って里山に下りてみたそうな。

偶然、通りかかった第一村人(老人・86歳)にイノシシが聞いた。

おじいさん、いま、何をしてるんですか?

ワシかい? なーんにもしておらんよ。ただ、海を見ていただけさ

ほほう、アレが海ですか? ボク、はじめて海を見ました。わー、大きいなー!

あれま! おめーは海を初めて見るだか? 生まれは山梨か? 山があっても山梨県か?

違います! ボクは伊豆の山奥で生まれたんです。

おお、そうか、そうか。じゃったら海は見たことないかもなー。ばってん♪

オジイサンは長崎の人ですか? カステラですか? オランダ坂?

なんでやねん? なぜにワシが長崎なのか、そこを問いたい!

だって、ばってん…。

あはは、コレかい? これは口癖っちゅうもんだにぃ。そやさかい。あきまへん。ばってん。

おい、イノシシの小僧。よーく聞けよ。ワシはこう見えても昔は漁師だ。

本マグロを追って世界の海を駆けめぐる男の中の男さーね!

ひとり漁獲高世界一の記録保持者だ。あー、いい時代だったなー。青春の漁師、絶好調♪

ところが人生の幸不幸はあざなえる縄の如し。人間万事塞翁が馬だ。

ある日のことじゃった。「フィッシャーマン猟師クラブ」の面々とイノシシ狩りに出かけたんじゃ。

海のハンターが山のハンターに変身した瞬間だな。

当時、ワシは名うてのハンターだった。

海で1000匹の本マグロを獲り、山では1000頭のイノシシを仕留める男!

ワシのニックネームは・・・・・・・・・「海千山千」。←ここ、爆笑!

ある日のことじゃった。

突然、この世のものとは思えん、すんげぇ巨大なイノシシが現れた。馬かと思った。


ベリー・サプライズ!

ほわっと・はっぷん!

ねぇ、うし? とら?

たつ み うま? ひつじ?

さる? とり? いぬ?

あ、イノシシだ!


あまりのことにビックリしすぎたワシは、目が見えなくなってしもうたんじゃ。

急性緑内障とかそういうことじゃないぞ。

目が見えない漁師なんか用なしだ。ワシは船を降りた。陸サーファーと同類項。哀しい!

ああ、もういちど海へ出たい! 大海原を縦横無尽に船を操って本マグロを追いかけたい!

じゃがな、そんなことは夢のまた夢さ。背中がどことなく寂しいだろ? 哀愁の老人…。

おじいさん、どうでしょう? ボクといっしょに海に出ませんか?

ボクの背中に乗ってください。

あそこに見える「初島」まで行ってみようじゃありませんか。 by ヤング・イノシシ

落涙、落涙、落涙。感激、感激、感激!  by 老人

若きイノシシの背に乗った老人(ジョー・みちる)は、意気揚々と初島をめざした。

春の潮風が心地良い。春風駘蕩、光りあふるるるるるるるるるオーシャンビュー!

イノシシは必死で泳いだ。山育ちの彼にとって、これが初泳ぎ。ファースト・遠泳。

老人を喜ばせるために力の限り泳いだ。短い手足を懸命に使って。

あまりに健気なイノシシ泳法。そんな彼を海が応援した。

さきほどまでの満ち潮が、いきなり引き潮に変わった。引力の反転に月もびっくり。

イノシシは全身で海を感じていた。おお、これが生命のルーツ、海か!

海は素晴らしい。暖かい金波銀波に抱かれ、揺られ揺られて、泳ぎに泳いだ。

2時間後。老人は初島の浜辺に立っていた。

太平洋の潮の香おりに包まれていた。漁師だった懐かしい日々が蘇っていた。幸福だった。

おい、イノシシ、ありがとうよ。



声を掛けたが返事がない。なんとイノシシは息絶えていた。濡れたままの獣毛、まだまだ細い牙。

過酷な初泳ぎに彼は精も根も尽き果ててしまったのだ。完全燃焼。

命と引き換えに「海」を老人にプレゼントした。

死んだイノシシをやさしくさすりながら老人は言った。

こんなことなら、船で来れば良かった…。


3年後。老人は彫刻家になった。心を込めてイノシシの銅像を造った。

5年後。老人は経営者になった。(有)いのしし村・代表取締役社長。

めでたし、めでたし。




以上、校長先生の楽しいお話でした。  

起立、礼!



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