|
●明日を見るひと。
愛車ミニで伊豆高原の急坂を走っていた。 前方に原チャリに乗ったオバサン。すごーーーーーーーーーーーーく、遅い! 道の真ん中を超低速で走っている。もそっと左側に寄ってくれよん。抜くから。 オバサンは時速10kmをキープ。すばらしい安定走行。完全なマイペースで我が道を行く。 ここはオバサンの私道か。私有地か。荘園か。藤原氏か。 普段ならさっと抜き去るが、そのときに限って対向車がひっきりなし。抜けない。だめだ。 オバサンは後方確認をしない。後続車がイライラしているのが見えませんか。 バックミラーを見てくれよ。見ない。見ようともしない。 ● 原チャリおばさんライダーのファッションが、またすごい! そのへんの主婦とは思えない色彩感覚だ。あばんぎゃるど! ピンクのヘルメットが可愛いじゃん! オレンジのパーカーがイカすじゃん! グリーンのスカートがナウなヤングじゃん! パープルのウォーキングシューズがフェミニンじゃん! ピンク、オレンジ、グリーン、パープル。感動的なファッションセンスだ。 もしかして、蛍光塗料・夏の新色発表会とか? ● オバサンは前を見すえて進んでいく。脇見運転などもってのほか。 前だけを見る。前しか見ない。明日しか見ない。過去は振り返らない。 明日があれば、昨日なんて、いらないのよ! 真剣なまなざしで明日を見つめるオバサン。 心なしか背中がピンとしているような、そうでもないような。 正しい姿勢でバイクに乗って、今日を越えて明日へ向かって走ろう。 ● オバサン、明日を見るのもいいけど、遅すぎない? いいえ! これは遅いんじゃなくて「スローライフ」って言うの! おお、スローライフ。流行の生活提言ですな。なーるほど。洒落てますね。 私だってヒマじゃない。いつまでもオバサンの後塵を拝するわけにはいかない。 対向車がとぎれたのを見計らって、一気に抜き去った。しゅーーん! ピンクのヘルメットが後方に消えていく。 夕闇にオレンジのパーカーが溶けていく。 6月の風がグリーンのスカートをめくりあげると、 伊豆の瞳・一碧湖が、思わず顔をそむけた。
|
|