まえ  つぎ  日記INDEX
明日を見るひと。


愛車ミニで伊豆高原の急坂を走っていた。

前方に原チャリに乗ったオバサン。すごーーーーーーーーーーーーく、遅い!

道の真ん中を超低速で走っている。もそっと左側に寄ってくれよん。抜くから。

オバサンは時速10kmをキープ。すばらしい安定走行。完全なマイペースで我が道を行く。

ここはオバサンの私道か。私有地か。荘園か。藤原氏か。

普段ならさっと抜き去るが、そのときに限って対向車がひっきりなし。抜けない。だめだ。

オバサンは後方確認をしない。後続車がイライラしているのが見えませんか。

バックミラーを見てくれよ。見ない。見ようともしない。

原チャリおばさんライダーのファッションが、またすごい!

そのへんの主婦とは思えない色彩感覚だ。あばんぎゃるど! 

ピンクのヘルメットが可愛いじゃん!

オレンジのパーカーがイカすじゃん! 

グリーンのスカートがナウなヤングじゃん!

パープルのウォーキングシューズがフェミニンじゃん!

ピンク、オレンジ、グリーン、パープル。感動的なファッションセンスだ。

もしかして、蛍光塗料・夏の新色発表会とか? 

オバサンは前を見すえて進んでいく。脇見運転などもってのほか。

前だけを見る。前しか見ない。明日しか見ない。過去は振り返らない。

明日があれば、昨日なんて、いらないのよ! 

真剣なまなざしで明日を見つめるオバサン。

心なしか背中がピンとしているような、そうでもないような。

正しい姿勢でバイクに乗って、今日を越えて明日へ向かって走ろう。

オバサン、明日を見るのもいいけど、遅すぎない? 

いいえ! これは遅いんじゃなくて「スローライフ」って言うの! 

おお、スローライフ。流行の生活提言ですな。なーるほど。洒落てますね。

私だってヒマじゃない。いつまでもオバサンの後塵を拝するわけにはいかない。

対向車がとぎれたのを見計らって、一気に抜き去った。しゅーーん!

ピンクのヘルメットが後方に消えていく。

夕闇にオレンジのパーカーが溶けていく。

6月の風がグリーンのスカートをめくりあげると、

伊豆の瞳・一碧湖が、思わず顔をそむけた。



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