まえ  つぎ  日記INDEX
主演・高倉健「鉛のバラ」


丸山健二氏の最新作「鉛のバラ」が届いた。読み始めるのが楽しみだ。

オモシロ冒険小説と丸山健二の小説。読みたい本は、これだけだ。

表紙をめくるとモノトーンの健さんの写真があって、こんな序文が載っている。

高倉健は、齢を重ねるにつれて凄みと人間味を増し、

ついにはスクリーンの外へはみ出すほどの怪物になった。

役者の範疇をはるかに超越した、肉体的でありながらもおそろしく精神的であるという、

類い希なる存在と化したのである。そこで私はこう考えた。

映像ではなく言葉でならば、それも映画よりも映像的な文章を駆使するならば、

高倉健が秘める手つかずの鉱脈を掘り当てることが可能ではないかと。


個人的にも交流のあるふたりが、小説を舞台にした初のコラボレーションだ。

丸山健二、高倉健。ほんとうに凄い男が、ここにいる。

そして、小説がはじまる。書き出しは、こうだ。

重なる夏日に海はうだり、水平線がぼうっと霞んでいる。

空と波のあいだを野放図に飛び散る光は、ますます幻惑の方向へと傾いていく。

南中する太陽は依怙地になってぎらぎらと照り輝き、

どんな賢人さえも破滅に導いてしまいそうな気だるさと、

底なしの寂寥と、いかにも安直な慰撫をふんだんにばらまいている。

視界の果てにあるものは、南国の水天彷彿たる壮観であり、

歳月の不滅の流れであって、それ以外の何かではない。


なんてたって、高倉健が、あの健さんが、小説主演なんですよ。たまらんです。

帯コピーが一行「主演・高倉健」だもん。新潮社、売る気になりましたね。いいことです。

丸山健二氏の小説は読者を選ぶけど、これまで選びすぎてあまり売れなかったからね。

さあ、そこのアナタも本屋へ走ろう。そして、こう言おう!

高倉健を、一冊!



まえ  つぎ  日記INDEX

inserted by FC2 system