待望の刺青を入れた。アウトローの必須ファッションである。きゃっ、かっこいい！

右手首には北極星が輝き、左手首には毒針を振り上げる獰猛なサソリ。

よし、イメージ通りの出来映え。

●ポラリス　　●スコーピオン

刺青を見たすべての人は、恐れおののき、あとずさる。ずり、ずり、ずり…。

タトゥーによる無言の威嚇！　命知らずの証明！　そのスジの男！　

人を人とも思わない暴力崇拝者であることを知らしめる明確なデモンストレーション！　効果抜群！　

私とまともに目を合わせる者など誰もいない。逃げるように離れていく。

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と、まあ、こうなる予定だったが、現実はキビシイ。アウトローへの道は遠い。

だってポラリスとサソリは速乾性スタンプ方式で、下の3種類はシールなんだもーん。ペタッて貼るやつ。

まずスタンプ方式を注文した。早速、ペタペタ押してみた。

ダメ！　全然、つかない。インクをたっぷりつけて押印したが、それでもダメ！

どうやら欠陥品を掴まされたようだ。抗議したがアトのカーニバル。ちぇ！

●トカゲ・唐草・竜（シール）

懲りずにシール形式のやつを注文した。これは簡単に貼れた。水を含ませたスポンジで軽く押さえるだけ。

はい、出来上がり。真夏の手首にタトゥー！　そんなオレは、海で、山で、もってもて！

説明書いわく。

石鹸で洗っても、海やプールに入っても、取れません。

はがす時は、ベビーオイル等油性のもので拭き取ります。 手軽にタトゥーが楽しめるシールです。

腕、足、背中、お腹、肩、腰などお好きな場所に貼ってください。

お祭り、海、勝負デートなど、出番は多彩。タトゥーがいつもと違うあなたを演出します。

お肌の為にＦＤＡ（米国・食品医薬品局）認可の化粧品用色素を使用して居ります。

私のお気に入りはトカゲだ。幸運を呼び込む動物らしい。トカゲの渡嘉ちゃん♪

3匹が輪になっている。「おヘソに貼れば最高！」とのことだが、ヘソに貼ってもなー。

一匹ずつバラして手首に貼ってみた。お、イカすじゃん！　自画自賛、ご満悦。

ところが、3日目に前足が剥がれ、4日目に後ろ足が消えてしまい、ヘビになった。←退化？

さらに5日目、シッポが完全に消滅して、見た目、おたまじゃくし！　←低年齢化？　

もう誰も私を恐れない。おたまじゃくしの刺青なんか怖くないぞ！　←だろうな。

あろうことか近所の子供がめざとく「おたまじゃくし」を見つけて、

「これ、カエルになるんですか？」とアホくさい質問をする始末。

ったく、冗談じゃねーぞぉぉぉ！

かくして、人々を戦慄させるべく計画した「恐怖のタトゥー戦略」はあえなく頓挫した。

おたまじゃくしに変身した哀れなトカゲを、セロテープで一気にベリッと剥がした。

手首が赤むくれになった。ことしの夏は、あちこちがヒリヒリする。