●2005年12月21日:青春大河ドラマ:伊勢エビたちの夏
日頃からお世話している(されている)美人Rさんから、年末恒例の「伊勢エビ&サザエ」を頂戴した。ありがとうございました。
伊勢エビはまだ生きているわけで、ぴゅーぴゅー鳴いているわけで、
それはもう新鮮なわけで、めちゃ旨そうなわけで。
せっかくなので食べる前に「生前最後の写真」をパチリ。
ピントを慎重に合わせて、シャッターを切る寸前、声が聞こえた。耳を澄ますと伊勢エビたちが頭を寄せ合って、ぶつぶつ、ぶつぶつ。
オレたち食べられちゃうんだな。
仕方ないじゃん。そういう運命だもの。
あの世に行ったら、いっしょになろうぜ。
うん。タカシ、指切りしよ♪ ほらっ。
それ指か? 足だろ?
あはは。どっちだっていいじゃん。
まあな。アケミのそういうアバウトなとこ、ちょー好き!
うぉい、うぉい!
お前たちは恋人だからいいよなー。
うふっ。
えへっ。
お前らは、あの世でいっしょになればいいけど、オレはどうなるよ? 寂しいじゃん。
そんなこた知らん。
それって冷たくね?
運命さ、あきらめろって。
だよな。運命だもんな。ところでアケミ、いろいろありがとう。
ううん、純くん。こっちこそお世話になりました。これからも元気でね。
や、もうじき死にますって。伊勢エビの活け造り。のんびり余生とか豊かな老後ゼロ。
あはは。そっか、そうだよね。
せめて成人式には出たかったよなー。
羽織袴に日の丸のハチマキしてよー。
あたしたちに輝く未来はないのね。
短い人生だったな。
うん。
ご愁傷様。
●
出来ることなら違うものに生まれ変わりたい。もっと長生きしたいじゃん。
生まれ変わるとしたら、タカシはナニがいい?
オレは、すき焼きかな。あとフォアグラ、フカヒレ、回転寿司の大トロとか。
それって自分が食べたいものじゃん。なりたいもの、言ってみ。
そうか。じゃ外人になりたい。ロブスターとかブラックタイガー。
ほげ。ねー、ねー、純くんは?
オレっすか。保存食に生まれ変わりたいかな。
なに、それ。
保存食って基本的には食べないから。
まあね。
普段はひっそりと「持ち出しにくい場所」にあったりして。
期限切れだったりして。
あわてて食べたりして。
ダメじゃん!
あーあ、オレたちはナニに生まれ変わっても食べられちゃう運命だ。
ちくしょー! 死にたくねーな。
死にたくない!
ト書き:すすり泣くタカシ
もらい泣きする純
静かに祈るアケミ
あきらめて成仏しようか。タカシも純くんも元気出しなよ。おお、みんな元気でな。
●
オレはアケミのこと忘れないよ。
忘れないでね、純くん。
伊東沖の静かな海で、逢瀬を重ねた楽しい日々。忘れないよ。
忘れないでね、純くん。
とろけるような熱いキッス! オレは忘れない。
忘れないでね、純くん。
ヘソから6cmほど下にあったホクロとか。オレは忘れない。
忘れないでね、純くん。
ちょい待ち! 純よう、いま何て言った?はて。
ホクロとか言わなかった?
言ったけど。
お前がどうしてアケミのホクロを知ってるんだよ、ええ?
知ってたっていいじゃん。
てめ、コノヤロ。おい、アケミ! 純と浮気しやがったな。
ナニ言ってんの。ばっかみたい!
そういえばオレが夜勤のとき、電話しても出ないことあったよな。
はて。
どこ行ってたんだよ。あんな夜中に。
忘れた。
忘れたぁ? とぼける気だな、こいつ。
タカシったら、やめてよ。こんなときに昔の浮気なんか、どうだっていいじゃん。
あ、あ、てめぇ。やっぱ浮気したのか。純とか? そうなんだな?
はいはい、しました。純くんとヤリましたとも。悪うござんした。
あ、あ、てめぇ。開き直ってやがる。ちくしょー、許せねーーー!
まあまあ、お二人さん。仲良くやりましょうよ。
あ、あ、てめぇ。純、てめぇ! オレの女に手を出しやがって。
ごめん。
ご、ごめん? ごめんで済むのかよ、ええ?
めんご。
たく、ムカつくよなー。イシワタが煮えくり返るつーの!
あ、タカシ。それはハラワタだと思われ。イシワタはアスベストなわけで…。
うっせーよ! 純、おめーなんか死んじまえ!
あんたたち、やめてよ! もうじき3人とも死ぬんだよ。
がーん!
じゃ、そろそろ窓に目張りをしてと。練炭に火をつけてと。ウインドウは完全ロック!
出会い系サイトで純と知り合ったのも何かの縁だよな。
うん。
キミたちナニ言っての。あたいらは高校の同級生でしょ。
そっか。オレは商業だけどアケミや純を見たことねーぞ。
あたいは伊高の卓球部。純くんは?
城高・美術クラブ。タカシは?
商業の応援団長。2年まで。中途退学。以後フリーター。
(★伊東市には「伊東高校・伊東商業高校・伊東城ヶ崎高校」がある)
思えば高校の頃がいっちゃん楽しかったよな。
うん。バンドやったり。
夢中だったもん。ハヤッたよな、GS。
ガソリンスタンド?
グループサウンズ! ブルーコメッツ、テンプターズ、タイガース、オックス。
そうそう! 中尾ミエ、園まり、伊東ゆかり。ナベプロ3人娘。
そうそう! 橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦。青春3バカトリオ。
時代が、ちがくね? 古くね?
そっか。オヤジの世代だ。オレたちの頃は「モー娘、黒夢、氷川きよし」。
タカシの好みが、わからんよ。
そうかぁ? オレはグローバルな男だからよ。
思いっ切りドメスチックだと思われ。
じゃ、純はどんな音楽が好きなんだよ?
僕的にはよく聴くのは、こう絞るやつ。ミカンより小さくて…。
ゆず。
それとか、夏目漱石みたいな…。
ケツメイシ。
それとか、ドーベルマンより小さくて、ほら、ほら。
スピッツ。
「空も飛べるはず」。いちど空を飛んでみたかったなー。
とんでとんでとんで まわってまわってまわって まわるぅぅぅ♪
それ、ちがくね?
アケミは?
あのさ、ノスタルジック大作戦もいいけど、あたいらもうじき死ぬんだよ。
がーん! がーん!
そろそろ食べてもらおうよ。天国に行ったら3人で楽しくやろうぜ。
じゃ、指切りしよ♪ ほら、ほら。
それヒゲだって!
包丁を入れてもまだ動いている伊勢エビ。この世に未練があるんだね。ぷりぷり、しこしこ。ちょー・まいうー!
頭は味噌汁に入れて、これまた、ちょー・まいうー!
そして、そして、サザエ。あわびに負けない。入れ歯が割れそう。こりこり、こりこり。
Rさん、おいしいございました。ありがとう。
お礼に伊豆名物の「みかん餃子」をお贈りします。
●
「みかん餃子」は伝説の餃子と言われ、地元の人も滅多に口にすることができない。
ミカンの房ひとつひとつに、ニラとニンニクを強引に詰め込んで、
全体をむりやり餃子の皮で包み、蒸して、焼いて、揚げて、茹でる。
まさに逸品中の逸品。珍品中の珍品。世界三大珍味。伊豆のトリュフ。
伝説の味・幻の味・伊豆名物「みかん餃子」。
皆さんもぜひ一度お召し上がりください。