まえ  つぎ  日記INDEX
●2005年12月24日:聖夜の光り


真冬の三連休、土曜日。

幸せな家族、不幸な家族、熱愛中のカップル、別れ際のカップル、

コンビニのバイト、酒屋の配達、ホテル支配人、その他の人々…。

すべての人が待ちに待ったクリスマス・イブがやって来た。

12月24日は、ちょっとした想い出がある。

それは7年前のイブのこと。

向かいの住人・Mさん(72)から声がかかった。

孫のために「光るクリスマス・ツリー」を作りたい。手伝ってもらえないか。

イブの当日ですが。遅すぎると思われますが…。

Mさんの庭に行ってみると、大きなハナミズキの下に、

豆電球イルミネーション・セットが置いてあった。

ツリーを作るんじゃなくて豆電球をハナミズキの枝に架けるだけ。

ハシゴを使ってなるべく高い枝に架けてあげた。作業時間5分。

夕方、Mさんの庭を見た。

樹木の大きさに較べてあまりに少ない30個ほどの豆電球がチカチカ光っていた。

いまハヤリのLEDでもないし、しつこいようだけど単なる豆電球。

左右上下に広がりながら点灯していくとか、そういう細かい芸当もなし。

灯いたり消えたりの単調な繰り返し。それだけ。実にシンプル。

伊豆高原の冷たい風の中で、そのささやかな光りは、とても質素だった。

翌年、新春5日。Mさんは心筋梗塞で亡くなった。

Mさんは、とことん他人に親切な人だった。

私が本格的にバラ作りを始めようとしたとき、

Mさんもいっしょになってあれこれ調べ、数多くの貴重なアドバイスをいただいた。

自分がわからないことはバラ専門の園芸店に問い合わせたりもしてくれた。

Mさんが亡くなったその冬、例のイルミネーションが12月初旬に点灯した。

ひたすら生真面目に点滅を繰り返していた。

Mさんの人柄を思わせるようで、少し悲しくなった。

今年もまた真冬のハナミズキに、Mさんの温かい心の光りが舞い降りた。

その穏やかで誠実な輝きの連なりは、

12月初旬から1月5日まで見ることができる「Mさんの星座」。



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