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●2月25日 伝説のカラス


近所に野鳥博士がいる。野鳥のことなら何でも知っている。

郡司・ぺドロサ・京太郎さん、67歳。

早朝のことだ。どんどんどんどんどん! 玄関を叩きまくる男がいる。

京太郎さんだ。うーさん、いっしょに、おいで! ウムを言わさぬ命令口調。

着いた先は伊東の観光名所、吊り橋で有名な城ヶ崎海岸。

すでに5.6人が望遠鏡を構えて、一心に中空を見つめているではないか。

野鳥博士の京太郎さんも、急いで三脚を立て30倍率の高性能望遠鏡をセットする。

みんながみんな興奮しまくっている。

エライこっちゃで! 

べりー・さぷらいず! やでぇ


いっつ・みらくぅ! でんがな


何でも300年に一度しか現れないという「伝説のカラス」が目撃されたらしい。

そもそもカラスは、脊椎動物門鳥綱スズメ目カラス科に属する鳥である。

世界中に生息しているが、日本ではほとんどがハシブトガラスだ。

たまに九州で見かけるのがミヤマガラス、北海道で目撃されるのがワタリガラスである。

京太郎さんは「伝説のカラス」をどうしても見せたくて、

私を拉致するがごとく強引にここへ連れてきたというわけだ。



と、ひとりが叫ぶ。いたぞー! あれだ、あれだ! あそこだ!

全員があわてて望遠鏡にかじりつく。

私も仰角45度方向を見つめる。ナニも見えない。カラスなど一羽も飛んでいない。はて?

早朝の城ヶ崎海岸。灰色の冬空が広がるばかり。

京太郎さんがさらに興奮した口調で、うーさん、ほれ、見てみ! あそこ!

望遠鏡をのぞく。見えない。そこには丘の上に建つ一軒の別荘があるのみ。

そのとき朝日が昇った。ぎらりと反射して光りを放つモノがいた。

神々しいばかりの、あれ。得体の知れない物体が、微動だにせずそこにいる。

人々は砂浜にひれ伏し両手を合わせている。もはや誰も望遠鏡をのぞく者などいない。

神は現れたのだ。ご降臨! くろう is ごっど! じーざす! あーめん!

京太郎さんは言う。

うーさん、あれだよ。あれが伝説のカラスだ。

あれを見た者は100年分の御利益があるんだよ。

こんなこともあろうかと私はデジカメで「神様」を連写した。

そこには伝説のカラスが二羽いたのだ。お互いにぴったりと寄り添って。

朝日を浴びて光り輝く羽根は、なんと透明だ。まさに奇跡のカラス!

そのときの写真を伊豆高原日記の読者だけにお見せしたい。

まだ鳥類学会にも野鳥の会にも、どこにも発表していない貴重な一枚です。



これぞ伝説のカラス!

ふーん、こういうオチか。

外気を遮断して、省エネルギーはもちろん、結露防止・防犯対策にも有効です、 ってか。

京太郎さん、朝から冗談はやめてください。

ふんとに、もう!



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