まえ  つぎ  日記INDEX
●2月3日 冬のバイク


今年はじめて外の水道が凍った。

霜柱をざくざく踏んづけて新聞を取りに行く。ない…。

このへんは配達されるのが遅い。7時50分頃だ。

暴風雨や雪の日などは9時過ぎになることがある。

左手にパンを持ち、右手で新聞をめくる。

これが朝食時のスタイル。約束事。キマリ。生活習慣病。

遅配の朝は、どうすればいいんだ?

空いた右手は、目的を失い、虚しく宙をさまようばかり。

手持ち無沙汰。

40数年、これといった落ち度もなく、マジメに勤め上げた会社を、

大きな花束と小さな退職金をもらって定年退職したお父さん。

新聞が来ない朝の右手は、お父さんに似ている。

お父さんは、定年後、温暖な伊豆で暮らそうと決意した。

近所づきあいが煩わしいから、

過疎の別荘地で野鳥やリスを相手にのんびりしよう。

ところが!

お父さんは冬の伊豆高原を知らない。さあ、大変だ。

市街地とは5度以上の気温差があるし、

しんしんと雪が降り、びしびしと氷が張り、

びゅーびゅー冷たい西風が吹きまくる、きんきんに冷えた夜、

80年に一度、ダイアモンドダストが見られる。

お父さんは、伊豆のなかでもトビキリの寒冷地に越したことを後悔する。

9時になっても新聞が来ない今朝。

そんなお父さんがお菓子を持って、引っ越しの挨拶に来てくれた。

ィ横浜から越してきたそうだ。永住するとのこと。

ここは寒いですね。いや、参りましたよ。

でしょ。

暖房はエアコンだけなんで、寒くて、寒くて。

そうですか?

夏は気持ちいいかと思って、大きな吹き抜けの家にしたんです。

なるほど。

やはり石油ストーブが必要ですね。

はい。

お宅の暖房は石油ストーブですか?

カイロ。

エジプト方面?

まあ。

それじゃ、失礼します。

ども。


いつになく口数の少ない私である。

だって、すごく寒いし、まだ新聞が来ないんだもん!

午前9時36分。気温4℃。強風。

体感温度マイナス32℃、バナナで釘を打った。

朝寝坊のY新聞め。来月からA新聞+伊豆新聞にする。決めた。

洗剤なんかで絶対にごまかされないからな。

待っても、待っても、バイクは来ない。新聞は来ない。

一日のはじまりを告げる、希望の排気音は聞こえない。

冬のバイクは、遅い。遅すぎる。



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