●4月6日 シマちゃん♪
懐かしい写真を見つけた。この写真を見ると彼女を思い出す。
新一年生の私に連れ添って、いっしょに通学してくれた2年生のシマちゃん。
シマちゃんは近所に住んでいた。家にも遊びに来ていた。
面倒見が良くて明るい活発な少女だった。運動が得意だった。
みんなが、シマちゃん、シマちゃん、と呼んでいた。
中学までは幾度か会ったりもしていたが、
やがて彼女は引っ越してしまい、以後、姿を見ることはなかった。
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あるとき、シマちゃんは、こんなことを言った。
あたしさ、名前を変えたい。
どうして?
だって、ヤなんだもん。
シマちゃんて、いい名前だと思うけどな。
ヤなものは、ヤなの!
ふーん。
だって、あたしさ、あたしの名前「しま子」だもん!
シマちゃん。あのときゲラゲラ笑って、ごめんね。
だって、てっきり岩下志麻の「志麻」だと思い込んでたからさ。
それが、いきなり「しま子」だもん。ひらがな混じりで「子」まで付いてるじゃん。
和服をキリッと着こなして、威勢のいい啖呵を切る姐さん=志麻
同じく和服は着てるけど、温泉民宿のベテラン仲居さん=しま子
旦那さんがファーストネームで呼びたくない名前No.1=しま子
まだ16歳なのにオバサン顔ねって言われます、みたいな=しま子
まだ16歳なのに娘盛りはずっと前に過ぎましたみたいな=しま子
シマちゃん、やはり「しま子」は、マズイかも。
当時、彼女のクラスではこんな名前が多かった。
亜里砂、絵麗奈、菜津美、円慈ぇ留、木村カエラ、BOA、氣志團、ヘンデル&グレーテル。
「●●子」は、ひとりもいなかった。ひときわ目立つ「しま子」。
彼女が名前を変えたかった理由は、もうひとつ。苗字だ。
横縞しま子(よこじま・しまこ)
横ジマのしま子!
おしゃれな春のボーダー柄? ストライプの重ね着? くどくなくなくない?
風の便りでは、シマちゃんは早く苗字を変えたくて22歳で結婚したらしい。さもありなん。
数年前、シマちゃんから手紙が来た。懐かしいなー。住所は府中市とある。
写真が同封されていた。許可を得たので特別にお見せします。
シマちゃん
府中で知り合ったボーイフレンド
いまもボーダー柄を着こなして、規則正しい生活をしてるんですね。
お早い社会復帰を祈っております。
シマちゃん、雨の日も、風の日も、小学校に連れてってくれて、ありがとう。
横断歩道を渡るときは、ギュッときつく握ってくれましたね。
あなたの柔らかくて温かな手、いまでも憶えていますよ。
「志麻」だろうが、「しま子」だろうが、「横縞しま子」だろうが、
「16歳のオバサン顔」だろうが、「ベテランの仲居さん」だろうが、
府中にお住まいだろうが、網走だろうが、アルカトラズだろうが、
シマちゃんは、あのときのままの素敵なシマちゃんです。
いつまでも、お元気で。
追記:仮釈が決まったら報せてください。お迎えに上がります。