●2006年1月10日:モチと成人式
近所の少年・タカちゃんに会った。彼は伊豆高原日記に何回も登場しているので、一部読者(主におばーちゃん)のアイドルである。
「その後、タカちゃんは元気ですか?」というメールをたびたび頂戴する。
孫の成長をやさしく見守り、陰ながら声援を送る一部読者の方々。微笑ましいです。
かと思えば「タカちゃんは、うーさんの少年時代を見るようです」と書いてあり、
思わず、み、見たんかい!と、ツッこみたくなるわけで。
ま、似てなくもありません。お互い気脈が通じるモノがあるので仲良しなわけで。
11歳の少年がナツいてくる。友人が極端に少ない私はちょっと嬉しいわけで。
4月から小学6年生になるタカちゃん。ますます男らしい面構えになってきた。
うーさん、謹賀新年。おお、タカちゃん。おめでとう。
オレの年賀状、見た?
見たとも。オール金箔じゃん。なに、あれ?
金粉ショー。
がはは!
注)タカちゃんの年賀状は全面に金箔が貼ってあった。まぶしい!
そこにひと言。「ピカピカで行こう!」と書いてある。
去年、おじーちゃんと金沢に行ったときに盗んできた。
金箔泥棒かよ。万引きだろ?
まあな。
しょーがねーな、ふんとに。
金沢に金箔工芸館があってさ、そこから少し失敬したという次第で。
ふーん。
金箔って食べるとカラダにいいらしい。うーさん、知ってた?
うん。
オレの年賀状、食べた?
今夜、キムチ鍋に入れます。モチも入れようかな。
あ、モチで思い出した!
なんだよ?
ガムとモチ、いっしょに食べてみ。
は?
ぶにゃぶにゃになる。
だろうな。
オレさ、ガム噛んでるのを忘れてモチを食べたわけよ。
はい。
ガムとモチが渾然一体となって、くんずほぐれつ。
うん。
切っても切れないアナタとわたし、ともに白髪の生えるまで。
都々逸かよ。
惚れさせ上手なあなたのくせに あきらめさせるのヘタな方ってね♪
なーるほど。
人の口には戸を立てながら、門を細めに開けて待つ。
ふむふむ。
うーさん、都々逸の合いの手に「ふむふむ」はやめてよ。
ごめん。それでモチガムはどうした?
仕方ないからそのまま呑み込んだ。気持ちワリーよ。
だろうな。
どうせならモチで作ったガムがあればいいのになー。
ロッテの餅ガム。息すっきり、ミント味かよ。
うーさんはモチ好き?
好き!
じゃ、来年の年賀状にモチ貼ろうか?
ほんとに貼れよ。
鏡餅の年賀状にする。
輪ゴムでまとめられないつーの。ポストに入りませんて。
ゆうパックでお届け。
うぎゃ。
でさ、1月11日は年賀状開き。割って食べる。
いいね、お雑煮やお汁粉で。
包装してあるビニールまで食べて。なんだ、こりゃ? とか言って。
あはは。
サービスに注連縄も付けようか?
いらね!
●
ところで成人式だけどさ、うーさん。
いきなり話題を変えるなよ。
なんか今年は静かに終わったね。
まあな。
オレ思うんだけど、あんなんでいいの? いいワケーもんが。
は?
みんな、いいなりじゃん。ヒツジみたい。
静かだよな。
ヒツジたちの沈黙。
お仕着せのイベントに出席する気持ちがわからねーよ。
うん。
オレはね、何も暴れろとか言ってんじゃねーよ。
はい。
ちゃんとした大人のハタチなら、成人式なんか出ないよな。
はい。
缶ビールでも買って「おめでとう!」って自分に乾杯すればそれでいいじゃん。
はい。
主催者はひたすら荒れないことを願って、若者たちはヒツジの群れを演じる。
はい。
すっかり囲い込まれてやがんの。たくよー。
タカちゃん、そんな興奮しないで。
とにかくだ、来年の年賀状にはモチを貼ると。鏡餅。
頼むよ。
うーさん、今年もよろしく頼むぜ。
こちらこそ。
●
タカちゃんは肩を怒らせて帰って行った。
事情により祖父母と3人暮らしのタカちゃん。
灯油のポリタンクをふたつ運んでいたのを見たことがある。
さすがに重いらしく階段の途中で休んでいたが、
オレにできることは何でも手伝うと言っていた。
涙もろくて、情に篤く、弱い人にはとことん親切で、
権威権力にひれ伏すことなく、自分で決断し、やるべきときは怯むことなく行動し、
充実した日々を着実に積み重ねて、毎日をリラックスして生きていく。
そんな男になってください。
ハタチを越えた11歳、伊豆高原にはこういう少年がいる。
タカちゃん(ふさふさ時代のうーさんに似ている)