まえ  つぎ  日記INDEX
●2006年1月4日:新春句会


我が過疎の村にも文化はある。

デパート、映画館、三菱東京UFJ銀行、三越、伊勢丹はなくとも文化はある。

六本木ヒルズや汐留サイトや銀座線はなくとも、スクランブル交差点はある。

伊豆高原いきいきヤング老人会主催の句会が開かれた。新春恒例のイベントである。

句会と新年会を兼ねて正月から大騒ぎしようという魂胆なわけで。

俳句なんぞは二の次三の次で、ただひたすら愉快な酒盛りをしたいわけで。

午前中は、ああだこうだと句をひねり、腰をひねり、赤子の手をひねる。

午後からは、満漢全席、酒を酌み交わし、歌い、踊り、叫び、ゲロまくる。

毎年、何名かの老人が興奮しすぎて死ぬ。別名・死の句会。

会長はご存じ「仙田さん」。司会進行は若手代表の私が大役を仰せつかった。

今年の御題は「イノシシ」。

なにかっつーとイノシシだもん。ワケわからん。


午前11時。

それぞれ自信作が出揃ったところで、すったもんだの選考が行われた。

会員による無記名投票によって優秀作が選ばれるが、

実は年末にかけて賄賂がぶんぶん飛び交い、水面下の戦いが始まっていた。

「洗剤」「缶詰」「温泉まんじゅう」「防災セット」「もずく酢」など、

密かにお歳暮が使い回される、年末恒例のダーティな選挙運動だ。

いちばんの人気商品は「最新デジタル補聴器」と「ポリデント=1年分」。

今年こそ、ワシに一票を頼むよ。

りょーかい! 来年はマッサージチェアを希望する。

なかには伊豆長岡名物・温泉まんじゅうの下に、びっしりと一円玉を敷き詰めたり、

天城名物・高級シイタケの下に、びっしりとシイタケ菌を敷き詰めてあったり、

天城名物・長寿の銘水「やんぐまん」の中に、びっしり高級金魚を混ぜてあったり、

天城名物・来年のカレンダーに、びっしりと予定が書き込まれてあったり、

入選するためには賄賂だろうが袖の下だろうが何でもアリだ。

入選作発表!

いのししも 牙をとれば ただの野良犬 (入選) 杉野老人

いのししが 海に入れば やはり犬かき (佳作) 斉藤老人

いのししと 勤王の志士は ちがう動物 (次点) 天野老人

優秀作発表!

しし鍋より すきやきのほうが おいしい   坂下老人

来年こそ 当たってさわごう 3億円!     藤原老人

われすすむ いのししのごとく まっすぐに  佐藤老人

最優秀作品!

浅草で 餅つまらせて 即死かな  片桐老人

栃木の 夜明けは寒いよ 脳溢血  野口老人

九十九里 初泳ぎして 溺死かな  飯島老人

青森で 飲むよ泡盛 ここは沖縄  佐藤老人


2006年度「やんぐまん句会」大賞発表!

姉歯より オレは断然 妹派  by 仙田老人

姉歯ヅラに 翼を休める アネハ鶴  by 仙田老人


大賞が発表されるやいなや(あず・すーん・あず)酒盛りが始まった。

乾杯の音頭から5分後。あちこちに大小の輪ができる。

話題沸騰! トーク炸裂! おしゃべり連打! 校歌放吟! ←校歌かよ


やれ紅白トリの天童よしみは、美空ひばりよりうまいとか、

やれ紅白トリのSMAPは、ヘタすぎて悪酔いして吐いたとか、

やれ和服のユーミンは、けっこう色っぽいので嫁にほしいとか、

やれ和服の藤あや子は、たまんねーぞ、もう! とか、

やれ年末に「まごころ市場」の紅白モチが買えなくて残念だとか、

やれ三島の「卸団地」で買った大トロは安くてうまいぞとか、

やれ正月からあれやこれやと食べ過ぎて3kgも太ってしまい、

あわてて万歩計を買って「365歩のマーチ」にノッて歩いたら、

一歩進んだら二歩下がるもんだから、目的地に着かなくて困ったとか、

やれ腰まわり&ヘソまわりのお肉は増える一方なのに、

見栄を張ってウエスト55cmのパンツを買ったがどうしよう?とか、

やれ親戚のオバサンが見合い話を持ってきたが、お相手は小学2年生。名前は竹千代。

政略結婚かい! あたしは、なんとか姫かよ! とツッこんだが無視されたとか、

どうでもいいような話題に、花が咲いて咲いて、散っていく。


2006年新春。

こういう可愛いげのある老人たちに、愉快な一年が訪れますように。

こういう大人げない老人たちに、素敵な一年が訪れますように。

子供や孫の顔を見ることもなく、たった独りで正月を迎えた独居老人に、

大盛りの幸せが訪れますように。

付録:予選敗退作品(字あまりすぎ)

げらげらと大笑いする老人の エクボにたまる 初春の光り  うー老人



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