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●10月02日:豆腐の日
旧友・杉野氏からたくさんの豆腐を頂戴した。 以前にも戴いた「こいしや食品」の豆腐。ちゃんと覚えていてくれた。 律儀な人だ。ありがとうございました。 いろんな豆腐がどっさり届いて今夜から豆腐三昧。 早速、温奴(あったかやっこ)をいただく。 電子レンジで2分ほど温め、特製ポン酢&もみじおろしで食べる。 うはうは、うまうま、あつあつ♪
この豆腐を独り暮らしの仙田老人にお裾分けしよう。 豆腐が好きだと言っていたから喜ぶだろうな。 温かい豆腐をつつきながら独りで酒を酌む仙田さんは、 秋の夜を長いとも淋しいとも思わない。 小さな食卓に擦り切れた文庫本が置いてある。 池波正太郎の鬼平犯科帳とか剣客商売。 ナイトキャップの代わりに、毎晩、数ページ読むという。ストーリーを熟知しているのに何回も読む。 折りジワだらけの文庫本。数限りないdogearは一日の句読点。
仙田老人は言う。 池波小説の面白さがわかるのは75歳を過ぎてからだ。 ぶっとい芯があるのに柔らかくて、粋なのに頑迷な筋を押し通す。 何気ないのに味わいがある。これ見よがしにしない贅沢な清貧。 そんな男たちの物語だぜ。わかるかい、うーさん。 池波正太郎、ガルシア・マルケス、カポーティ、塩野七生「ローマ人の物語」最新刊…。 他にも読みたい本がヤマほどある。観たい映画は数え切れない。 聴きたい音楽や、観たい芝居だって挙げたらキリがない。 時間なんかいくらあっても足らんよ。 今日を充分に生き足りてないから簡単に明日が来ちゃあ、困るんだよ。 だからよう、夜が長いなんて思ったことたぁ、ねぇよ。
飄々とした江戸っ子学者は、かく語りき。 仙田さんがくぐり抜けて来た幾つもの夜は、柔らかくて、味わい深い。 こういう人が豆腐の本当の旨さがわかるんだろうな。 仙田さん、明日、お持ちします。とびきりの豆腐を。
伊豆高原に薄い雨が降っている。 仙田さんが渋々今日というページをめくる音が聞える。
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