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●10月04日:メロンの日
そば「いし塚」で早めにランチ。定番のせいろ&揚げ出し豆腐。 下田海中水族館で名物の秋刀魚ショー(秋季限定)を見てから、下田城公園を散歩する。 まだ時間があるけど、どうしよう? どこ、行こう? と、相方が提案する。テレビで紹介していた「メロンのおいしい店」へ行こうよ。 もしもツアーズにも出てたよ。
南伊豆にあるメロン屋さん。←今回はさすがに匿名です 見るからに怪しい雰囲気だけど、ものは試しと入ってみた。 駐車場はガラガラ、店内もがらがら。誰もいない。し〜〜〜〜〜〜〜ん。 こんにちは〜。声をかけたが返事はない。 ほわほわんとメロンの甘い香りが漂っている。ふむ、確かにメロン屋さんだ。
突然、カウンターの向こうから亡霊が現れた!
うわわわわわわわわわぁぁぁぁ〜!
いら・・・・ っ しゃ ひぃ 。
な、なんだよ! ここは心霊スポットか! いきなり幽霊かよ。 もしかして丹波さん? 大霊メロン界? ハワイにもレイはある? ビックリしたなぁ、もう! by三波伸介 よーし、オレがさまよえる霊を慰めてあげよう。 いまから「江原啓之」になるぞ。スピリチャル・カウンセラーだぞ。そんな専門学校は少ないぞ。 やい、幽霊め。おとなしく消えなさい。あの世に帰りなさい。
と、どうだ! 幽霊がメニューを持ってきたではないか。歩いて。 すごい痩せた青白い顔をしたオバサンだった。まだ生きている。幽霊ではないようだ。 ごめんなさいね。ちょっと立ちくらみがして、そこに座ってたのよ。 カウンターの向こうに小さな椅子があった。そういうことか。 実在する人間だとわかりホッとしてメニューを見る。 「おいしいメロン=時価」だって。 値段を確認すると、まるごと1個=3400円、ハーフ=1700円、1/4サイズが850円。 なるほど理にかなっている。計算間違いなし。 ウチと同じメロンを千疋屋で買えば10000円以上すると、オバサンは豪語する。 1/4サイズ=850円を2個注文する。
立ちくらみのオバサンが再びカウンターの向こうに消えた。 5分後、よく冷えたメロンが出て来た。 では、いただきましょう。相方はもう食べている。 うまい! 甘い! うまい! 甘い! うまい! 甘い! うまい! 甘い! まさしくメロンだ。ほんもののメロンだ。 父ちゃん、オレはお見舞い客が多い入院初期の患者か。
唇を淫らに濡らした南伊豆メロンの甘汁をぬぐい、さあ、お会計。 850円×2個=1700円。じゃ、2000円で。 と、オバサンは渡した2000円を握りしめて、レジをガチャガチャやっている。 盛んにクビをひねっている。 あれれ? どうしたんだろ? 開かないねぇー。おやおや? レジが開かないのだ。オバサンがあちこち叩く。それでも開かない。 私と相方は顔を見合わせる。 これか? これだ! これが噂の伊豆地方に古くから伝わる「レジが壊れた・お釣りが出ない」商法である。
2000円-1700円=300円。 旅行中は太っ腹になっている観光客の場合、お釣り300円なんぞ小銭のなかの小銭。小銭の王様だ。 当然、オバサンにチップとしてあげる。レジが開かないんだもん。 オバサンが一生懸命にあちこち叩いても、開かないものは開かない。完全に壊れている。 いくら待ってもお釣りはもらえそうにない。次の観光地へ行く時間が迫っている。 いつまでも南伊豆のメロン屋でぐずぐずできない。 あきらめよう、300円。メロン、うまかったんだしぃ、まっ、いっか。 おばさん、いいよ、いいよ。お釣りはチップだと思って取っといて♪ まあ、すみませんねぇ。え、チップ? いいんですか? ありがとうございます。いつもは開くんですよ、このレジ。
ところが、どっこい! 私は観光客ではない。伊豆半島永住10年のベテランだ。誰よりもお釣りを欲しがる男だ。 オバサンとレジをじっと見つめる。冷静に見つめる。いくらか鋭い眼でグッと見る。 余裕の表情でレジが開くのを待つ。徹夜しても待つよと宣言する。 相方は相方でこれまた性格が悪いので鼻歌混じりで店内を見回している。 ふたりともお釣りをもらうまで絶対に帰らない。
オバサンが言う。 あんたち、お釣り、欲しいよね? ウン。 わかった。じゃ、奥さんを呼ぶね。あたし、パートだから。
インターフォンですぐ来てくれと伝える。 太った奥さんらしき人が現れる。ブッとした表情で鍵を差し込む。たちまちレジが開く。 お釣り、いくら? オバサンは申し訳なさそうに言う。300円です。 私は太った奥さんから300円をもらう。
メロンを食べ終えてから20分以上経過している。 ノドが乾いた。コンビニで「うるおい美率」を買う。300円-230円=70円。 5秒でお釣りを返してくれた。
メロン屋さんを出る寸前、青白い顔をしたオバサンが私に小さくウインクをした。ぱち♪ あれはどういう意味なんだろう。いまだに謎だ。 きちんとお釣りをもらう「正しい客」として振る舞ったことへの拍手のつもりか。 オレに惚れたのか。よくわからん。
たかが300円、されど300円。300円を笑う者は、300円に泣け。 おいしいメロン、レジが壊れた・お釣りが出ない商法、幽霊おばさんの意味不明なウインク。 世の中、言葉にできないことが多すぎる。
★おまけ:言葉にできない。
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