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●2006年３月2２日・親切な人
シティホテルやデパートには「サービス案内係」のような人がいますよね。 いわゆる受付ではなくて、お客様の要望をあれこれ聞いて、きめこまかなサービスをする人が。 いかなるニーズにも親身になって応対いたします♪ という人が。 「伊勢丹のようなサービスができる本」みたいな人が。 いつもより余計にお皿を回します、はい♪ みたいな人が。 昔、松戸市が発明した「すぐやる課」みたいな人が。
適量の真心がこもったホットな笑顔とクールな態度。 彼または彼女の仕事ぶりは実に気持ちがいい。 そういう人が動くと音がする。ほんとだよ。 てきぱき、てきぱき。てきぱき、てきぱき。てきぱき、てきぱき。てきぱき、てきぱき♪
ああいう仕事をなんて言うんでしたっけ？ ほら、はやりの言葉で。 ここまで出かかってんのになー。 こん、こん、こんしぇ、こんしぇる…。ああ、ジレったいなー。 確かコーンスープみたいな名前だったよね。 「らるく・あん・しえる寿」だったような気もするが、はて？ ● さあ、これを、ふまえて！ 春、花を咲かせる雨のことを「催花雨（さいかう）」という。 開花を催し促す雨が、花々に降り注ぐのはいいけれど、 この時期の雨は大量の土埃と花粉を含んでいて、 ぴかぴかに洗車したミニクーパーが、 ひと雨降ると一夜でドロドロになる。異常に汚れるんです。見てみ、ほら。
いまにも降り出しそうな空模様だが、「さくらの里」までロング散歩。 イヤフォンでつないだiPodから脳天気なスムーズジャズが流れてくる。 早足散歩にはぴったりのリズム。いい気分だ。 生ぬるい土の陽気が、花曇りの空が、湿り気のある風が、 清新の気風にあふれた新芽が、春だ春だと告げている。 市街地のコブシはすでに白い花を咲かせているが、 この辺りは標高が高いので、コブシも木蓮も、まだまだ蕾。
とーちゃん、 あの大きな蕾には、 春がいっぱいつまってるんだね。 ←いきなり叫ぶ、新しいパターンです
さくらの里。 お花見にはほど遠い状態だが、平日だというのにけっこうな人出。 若い家族や古い家族が芝生広場でお弁当を広げている。 お弁当を忘れた家族は芝生をむしって食べている。 若いカップルがバドミントンをしたり、 中年カップルがフラフープをしたり、 下町の工員がキャッチボールをしたり、 幼稚園のこどもたちが騒ぎまくって、ウサギを追いかけて、つかまえて、食べて、葬って。 どこかの老人会が気の早いお花見を開催して、飲んで歌って踊って死んで、葬られて。 我、死なん。春、桜の下で。ｂｙ西行 とか言ってるジイサンがいたり。
このカメラ、いいカメラ、新宿ヨドバシカメラ。 あなたシャッター押せ。旅の記念だ。
うぉい、うぉい。 人にものを頼むのに、その不思議な言い回しは…。 振り返るとアラブ出身と思われる男が立っていた。 困ったな。５カ国語ぺらぺらなのにアラビア語だけは不得意なオレ。 ええい、ままよ。カタコトの日本語英語でいくか。なんとか通じるだろ。 ニンテンドーDS「えいご漬け」の成果を発揮するときだ。
はろー、えぶりばで。ないす・みーちゅう。あいむ・ふぁいん・さんきゅ。 ？？？ はう・おーるど・あーゆー？ あーーんど、はう・まっち？ ？？？ おふこーす、わんないと。はう・まっち？ ははん？ ぱーどん、ぱーどん。 ？？？ おお、のーー！ じーざす！ 高い、高すぎるよ。 ぷらいす・だうん、ぷりーず。７０％ＯＦＦ！ ？？？ ところで、めーあい・へるぷ・ゆー？
あ、そうか。あなたの要望はシャッターを押してくれと？ いいですよ。お安いご用です。 中東はアラブからはるばる伊豆まで来たんだから、 しっかり記念写真を撮っていきましょうね。 石油地帯の人が温泉地帯へやって来る。いや、感心、感心。 ってオレは誰よ。 はい、いいですか？ 撮りますよ。 チーズまたキムチィまたは甘納豆またはバーボンウイスキー！ じゃっく・だにえる♪
我らイスラムは、酒飲まないし、キムチも食べない。 ましてや甘納豆とか食べるかい！
じゃ、笑顔をつくるときは、なんて言うんだい？
シシカバブぅ。
なんとか話がオチて、ほっとしていると老夫婦が近寄ってきた。 あのう、道を尋ねたいのですが、よろしいですか。 どうです、この丁寧な物言い。 ガラス工芸美術館へは、どう行ったらいいんでしょう？ お車ですか、バスですか、駕籠ですか？ え、徒歩で？ ここからだと少し遠いなー。でも健康のためです。歩きましょうか。 はい。 えーと、このバス通りを道なりに下って行くと、大室ショッピングセンターがあります。 この辺ではみんな紀伊国屋とか丸正とか成城石井とか言ってます。 その店にぶつかったら右方向に道なりに行ってください。 ほんとに店にぶつかったら痛いですよ。そんな人はいない？ あはは、奥さん、冗句ですよぉ。
ゆっくり海を眺めながら歩いてください。きょうは大島がよく見えます。 ああ、あれはミンダナオ島じゃないかな。その先、霞んでるのがアリューシャン列島。 この長い下り坂を「海の見える公園通り」っていうんです。 ぐらんぱる公園とシャボテン公園を結ぶ道なんです。 はい、着きました。ガラス工芸美術館です。 ごゆっくりお楽しみください。
私はこのほかにも様々な質問にお答えする。 観光客のために、伊東市財源のために。
えーと、この道を右へ行って…。 ほんとうに日本は戦争に負けたのか。中佐、即答せよ！ えーと、この道を右へ行って…。 乙部綾子、退職したんだって？ タレントになるのかな？ えーと、この道を右へ行って…。 オレの名前はチャーリー。あんぱん工場に勤めています。 ←チョコ、チョコ！ えーと、この道を右へ行って…。 久世光彦、死去。残念です。「向田邦子ドラマ」とか「時間ですよ」、 あるいは「フー族」とか好きだったなー。いつも見てました。 風俗かい！ 小ネタかよ！ えーと、この道を右へ行って…。 ● このように私は観光客にとても親切だ。 なぜなら、はっきり言って、伊豆には、 生涯記憶に残るような、ものすごい風景があるわけでもなく、 生涯記憶に残るような、とんでもない珍味があるわけでもなく、 生涯記憶に残るような、効能抜群の温泉があるわけでもない。 ただ、のほほんとしているだけ。 やたら坂が多いだけ。
成績は中の下だけど、かわいいんだなー、これが。 そりゃ観光地としてはベテランですから、すれっからしですよ。 良いところもあれば、悪いところもいっぱいある。 こう言っちゃナンだけど男経験も豊富です。 でもね、根は純情で、よく気がついて、人あたりがいい。 料理上手でお掃除上手な伊豆半島。
1２00円の美術館、見るモノなくて天井見てた。 伊東駅は快晴なのに、大室山は大雨かよ！ でもね、でもね、そんな伊豆が好きですね。 観光客のみなさん、いい思い出を残してください。 しっかり見ると、いいところがいっぱいあります。 何回も足を運んでください。きっと、伊豆が好きになります。 私がそのお手伝いをいたしましょう。 みなさんのお役に立てるなら、いつでも、どこでも、馳せ参じます。
うふ♪
とーちゃん、オレは町のコンシェル寿か？
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