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4月23日:八重桜


先週の金曜日。

天城のマメ桜が満開だというので、今年最後のお花見に出かけた。

この日は、明け方から強風が吹き荒れており、

春特有の砂塵を含んだ霞や靄など一切合切が消えてなくなり、

旗幟鮮明な青色が、揺るぎなきスカイブルーが、伝統の紺色が全天に広がっていた。

日々見慣れた薄ぼけた青や、どっちつかずの曖昧な水色ではなく、

晩秋よりも深い晩春の蒼穹。

額に入れて永久保存したい、ほんとうに美しい快晴だった。


小粒のダイアモンドを鏤めたマメ桜の清楚な白は、

残念ながら紺青の空に圧倒されてしまい、うまく撮影できなかった。

代わりといってはナンですが、豊満かつ艶やかな八重桜を、どうぞ。

ソメイヨシノや大島桜、マメ桜のように、人々に愛でられ、記憶に残る桜ではない。

重苦しく、ぼてぼてと花びらを重ね、くどく、しつこく、脂肪過多な八重桜。

ところが、ぐっと接近して見ると、その花びらは意外に可愛らしくて、

見た目より遙かに傷つきやすく繊細な桜に見えた。


ふくよかな白の重奏、妖艶な微笑み、愛らしい色香。

完璧な四月の蒼天を従えた八重桜は、もしかすると晩春の女王かもしれない。

その証拠に白の石楠花でさえ彼女の前では謙り一歩引き下がる。

俗界の出来事とは一線を画して存在する貫禄の桜。

金曜日の青空とまともに対峙できる唯一無二の花。

人の気持ちの深いところまで理解できる聡明な桜。

明快な青も良いがペールブルーも素敵だという八重桜。

黄金週間までのつなぎ役を終えると、潔く引退宣言をして散り去っていく八重桜。

萌え立つ新緑に後を託して初夏の向こうに消えていく八重桜。


絢爛豪華な7日間の花舞台。

晩春の女王、八重桜。みごとでした。

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