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●6月20日:夕陽が丘3丁目12番6号
さあ、行かねば、行かねば、ツタヤに行かねば! うーさん、これはおもしろいよって、ツタヤの薄毛店長が太鼓判を押した。ぽん♪ 店長と私は、作品・監督・俳優などの好みが似通っていることがわかり、 平日午後などの空いた時間に話し込んだりする。 彼の映画を観る視点は実にシャープだ。前田有一氏といい勝負かもしれない。 一昨日、とくに観たいわけではなかったが、 「ALWAYS/三丁目の夕陽」を借りに行ったら(←オールレンタル中)、 なんと陳列レイアウトがすっかり変わっていて、びっくり。 いつもなら「洋画新作コーナー」をチェックして、 「まだまだ新作コーナー」へと横移動して行き、見逃している作品がないか確認する。 つづいて最下段にさりげなく置いてある、ミニシアター系の作品を、矯めつ眇めつ。 洋画コーナーにソソる作品がなければ、日本映画のセクションに移動する。 こういうツタヤならではの一連の流れがあったのに、なんだか調子が狂う。 ほかの人も戸惑っているらしく、うろうろ、まごまご、おろおろ。 店内のあちこちで客同士がぶつかって、小競り合いが起きていた。 このままいくと暴動あるいは民族紛争に発展しそうな気配で、 へたすればテポドン2号を発射しかねない。 おお、そうだ。客同士の喧嘩など、どうでもいい。 肝心の「ALWAYS/三丁目の夕陽」が、どこにもない。 DVDを月20本以上借りる私は、ツタヤのすべてを知っている。 どこに、どんな作品があるか。いま、どれがオススメか。バイトの店員より詳しい。 その私が恥を忍んで聞いた。
一瞬、迷ってから、若い店員は答えた。
終点が「夕陽が丘3丁目」です。 とにかく夕陽がきれいな町。 とにかく海も空気も山もきれいな町。 とにかく若い女性も若くない女性もきれいな町。 町民は、とても親切で、古き良き日本を見るようです。 町全体が、まさに昭和33年。 いつも、いつも、ALWAYS、静かに夕陽が沈む町です。 きょうは、こういうオチになったわけか。 うぉい!
あのね、キミが親切に教えてくれたのは、西伊豆のイチ町名じゃん。 確かにロマンチックな町だよ、あそこは。 やがては恋人岬より人気スポットになるかもね。 愛と健康の伊豆半島ウエストサイド、夢と希望のニュータウン「夕陽が丘」。 郊外型スーパーやファミレス、ケーキ屋とか薬局が続々出店! 知ってるよ。不動産のチラシ、見たもん。 できることなら住みたいよ、そういうとこに。 だけどさ、違うっつーの! オレはね、別に新居を探している新婚さんじゃないわけよ。 ごく普通に純クンが出てる映画「夕陽が丘3丁目」を借りたいわけよ。新作2泊3日で。 純クン、知ってるだろ? 知らね? 驚きじゃん! 「北の国から」の純クンだよ。五郎さんの息子、蛍ちゃんのアニキ、知ってるだろ? 最近は寒いとこがイヤで、南の島で診療所を開いたりしてるよな。 あんだー・すたん? 材木屋のナカちゃんが好きです。 地井武男かよ! チイチイかよ。マニアだね、あんた。 したっけ、ナカちゃんチは材木屋だよ。 オレが言ってるのは、よ・し・お・か! 吉岡秀隆! 純クン!
若い店員は、ハッとした表情で私を見た。頭頂部を見た。申し訳なさそうに謝った。 あなたは伝説の映画評論家&日記作家のWOOさんですね? 店長から聞いています。くれぐれも粗相のないようにって。 西伊豆の夕陽が丘を説明しちゃって、すんませんでした。ぺこり。 でもね、WOOさん。あれは「夕陽が丘3丁目」じゃなくて「三丁目の夕陽」ですから。 が丘全体が夕陽に包まれるわけではなくて、 三丁目あたりに夕陽が沈む、それだけの映画です。 甘っちょろいノスタルジック大好き団塊オヤジ向け懐古ムービー。
私は「夕陽が丘3丁目」と思いこんでいた。マジで。 そりゃ、店員もまごつくわけだ。申し訳ないことをしました。ぺこり。 だがな、ワケーの。よく聞きなさい。 仮にもツタヤでバイトしているなら「夕陽」と聞いただけで、 間髪入れずに「ALWAYS・・・」をパッと持って来る。 それがツタヤマンの反射神経ってもんだろ。な、な? 内容はともかく話題作なんだろ。 昭和33年の東京に行きたいのに、西伊豆・夕陽が丘の物件を案内をされても困るよ。 でも、キミは「観光こんしぇる寿」としては合格。おみごと♪ 目覚ましい変貌と進化を遂げつつあるツタヤと店長とバイトくん。 さらなるご健闘を祈ります。 明日、一番で「LOST」借りに行くから、よろぴく。 |
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