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●8月30日:晩夏でもなし、初秋でもなし。



夏のイノチが終わると、秋の生命が生まれる。

秋の虫たちは、入念なヴォイス・トレーニングを終えて準備万端。

セミ、トンボ、蝶たちの追悼式で葬送の合唱をする予定だったが、

指揮者である「秋風先生」が姿を見せない。

朝晩、少しだけ気配を感じるが、いまだに大きな顔をして照りつける、

季節違いの太陽が現れた途端、またしてもどこかへ消えてしまった。

指揮者の秋風先生がいないことには、夏舞台の主役だった昆虫たちの追悼式は始まらない。


いま、伊豆高原は、晩夏でもなく、初秋でもなく、老夏。

グラデーションのように、さりげなく、静かに、季節が移り変わっています。

日に日に乾いていくこの時期の風は、実に礼儀正しい。

熱い上昇に乗せられて、くねくねした下心たっぷりの夏風ではない。

気持ち良く直線的に流れてくる風。秋の奥から、まっすぐ吹いてくる。

恩着せがましく、これみよがしに吹く、真夏の風はどうも好きになれない。


日向の匂いを充満させた土の上には、数え切れないほどの初雪草のこぼれタネ。

庭一面を支配した緑葉が美しいギボウシは、ひと夏の高温に焼かれ茶色に変色し始めているが、

たいしたもので来春には再び大きな緑葉を輝かせるだろう。

今年は大豊作だったブルーベリーの実を、ヒヨドリがつついている。

スキン頭の主人は、それはお前の分だから存分に食べろと余裕綽々。


見上げた空には、沸き上がる雲塊ではなく、自由に浮かび、流れつづける小さな雲。

自由に漂泊する軽くて重い雲。理想の生き方がぽっかり浮かんでいる。

処暑と白露の間に、なんの気負いもなく、ただ浮かんでいる。


トシとともに暑い夏が嫌いになっていく。

春秋冬の日本で満足です。夏なんか要りません。

なんならアイスランドとか北欧とか、そういう国に永久貸与したらどうですか。

春秋冬では語呂が悪いとお嘆きのアナタへ。いままで通りにしましょうか。

春蚊秋冬。どうよ、文句あるまい。

春歌秋冬。どうよ、文句あるまい。 

春果秋冬。どうよ、文句あるまい。


まもなく大好きな9月がやって来る。

うーさんのメモリアルな季節だぜ、べいびー!





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