●2007年02月13日 虎屋の羊羹♪
その闇は、玉のような光を吸い取って、夢見る如きほの明るさを孕んでいる。
羊羹には瞑想的な闇がある・・・と形容したのは谷崎潤一郎。
確かに羊羹には美しい光を内包している闇がある。
羽根のように軽やかな明るさを支えている闇がある。
重く、深く、かそけき闇よ。
その闇の中にとんでもない甘さが沈んでいる。
虎屋の羊羹「夜の梅」。
大室山の山焼きが終わり、35000人の観光客が大渋滞の中を帰って行く。
あっという間に終わっちゃったね、来年はキラウェアの山焼きを見に行こうぜ。
いや、ベスビオスもいいかもよ…とか言いながら帰路につく午後2時、伝説の少年がやって来た。
みなさん、お待たせしました。
今春、中学2年生になる「タカちゃん」です。
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うーさん、御無沙汰でした。
3連休を利用してジイちゃんとこに遊びに来ました。
オヤジが山焼きを見たいなんぞとガキッくさいこと言うんで、そのお供ってわけです。
伊豆高原日記は毎日きちんと読んでますぜ。
いまや世田谷の中学生で伊豆高原日記を知らないヤツはいませんね。
あ、これ、どうぞ。虎屋の羊羹。うーさんの大好物。手土産の定番。
変わり映えしませんがご笑納くだされば幸いです。
え、お茶? いや、いいっす、いいっす。
うーさんは客嫌いっての知ってるもん。
久しぶりにうーさんと四方山話をしたいんですが、実はゆっくりもしてられねぇーんですよ。
これから祖父母とバツイチおやじとで「嵐の湯」に行って、ひと汗かこうって寸法なんです。
最近、嵐の湯がやけに評判いいんで、あっしも一度経験しておこうと思いましてね、へい。
で、岩盤浴のあとは、これっきゃない!
うーさんご推奨の「旬席ふみ」で夕飯を食おうと…。
どうです、ようがしょ?
と、まあ、こんな段取りなんで今日のところはご挨拶だけで失礼いたしやす。
我が永遠の大師匠・うーさん、くれぐれもお身体をご自愛くださいますよう。
切に、切に、切に。
それじゃ、ごめんなすって。
大人の入り口に差し掛かった少年は、フイに現れて、さっと消えた。
礼儀正しい挨拶と、きちんとした手土産。
もう何も教えることはないと思った。
あとはタカちゃんが、自分で考えて、思い切り行動すればいい。
強いて希望を述べるなら、シンプルでわかりやすい単純人間ではなく、
「夢見る如きほの明るさを孕みながら、深い闇を抱え込んだ男」になってもらいたい。
光りを持つ闇の中にこそ、とんでもない才能の源泉があるのだから。
梅の香がほの甘く舞う夜に、虎屋の羊羹「夜の梅」を、ざくっと切って、ひと口。
濃密な光と闇が、口の中で溶けて踊り、
天下不動の重く深い甘味が極上の緑茶を催促した。
さんきゅ、少年♪