まえ   つぎ   日記

2007年03月10日 わさびの花


梅や桜のように、見せるために、見られるために、

高い枝の上で咲く花よりも、ワサビの白い花が好きだ。

白花の夢枕にされていた瑞々しい緑葉が、例年より2週間も早い開花を促すと、

あわてた奥天城の清流が、これでもかと純潔無垢な栄養素を送り込む。

ついで乱反射する光の粒子と透明な甘風が束になって小さな花胞を刺激すると、

瞬く間に20-30もの白小花が咲きはじめ伊豆に正式な春を告げた。

このときを待っていた意気盛んなウグイスが未熟ながらも初音を聞かせると、

何を勘違いしたのか嫌われ者の杉は、憂さと愚痴が入り混じった花粉をどっと吐き出した。

こうして山葵の山里は、空も、雲も、風も、雨も、土も、水も、すべてが春色となって一世を風靡する。

中伊豆の風に吹かれて、うつらうつら咲いているワサビの白い花。

地上20cmあたりで、静かに、強く、真上を向いて咲いている。



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