静岡県伊豆沖で5日、脱北者とみられる家族4人が乗った不審船が見つかった事件で、
県警は救護の必要性から、警察官職務執行法に基づき、4人を保護し、事情を聴いた。
調べによると
家族が暮らしていた北海道は、慢性的に「食料」と「自由」が不足しており、
パンは5日おき、パン粉は3日おきに食べるのがやっとだという。
厳しい食糧難から、土、泥、草、皮、木の根、キタキツネ、クマ、エゾジカ、鮭、マリモなどを食べて飢えをしのいでいたが、
それも食べ尽くしてしまい、餓死寸前だった一家は、北海道脱出を決意したという。
命がけで脱北して来た家族4人は、夫婦と息子兄弟。
父親が山の猟師で、長男が海の漁師、次男がタコ漁師であることが確認された。
乗っていた船はタコ漁に使うために次男が購入したもので、その収入で家計を支えていた。
父親は、キタキツネ専門の猟師で、たまに鮭をくわえたクマを獲ることもあり、
鮭とクマを同時に獲るなんて「オレは猟師で漁師か!」と、はしゃいでいた日もあったという。
父親は、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ラテン語、ルーマニア語などはまったく話せないが、
北海道なまりがあるものの日本語だけはぺれぺれで、
さかんに「伊豆は暖かいっしょ、北海道はシバレルっしょ!」と意味不明なことを口走っているという。
4人は北海道の「公民証」とみられる身分証明書と、わずかな人民円を所持していた。
このほか船内には、カッパや傘、ウニ、フクロウ、木彫りの熊、ジャガイモ、タオル、夕張メロン、トウモロコシ、
毛蟹、たらば蟹、各種サーモン、松前漬け、数の子4トン、サッポロラーメン、旭川ラーメン、いくら、
函館トラピストバター&チーズ、白い恋人詰め合わせ、グリーンアスパラ、養殖マリモ缶、洞爺湖ウインザーホテル、
スープカレー3万リットル、熊出没注意のステッカー、ホタテの貝柱、利尻昆布、ラベンダー人形オルゴール、
この他、旭山動物園、札幌の時計台&雪まつり、稚内の流氷、パジャマ、靴下などの日用品が積まれていた。
調べによると
6月1日、タコ漁船で北海道を出航したが、津軽海峡に差しかかると天候が急激に悪化。
船が揺れて食事や会話もできないほどで、必死で船にしがみついていたという。
4人は船で直接、楽園リゾート沖縄orハワイに行くつもりだったが、警備の厳しさから断念し、
目的地を中途半端に温暖な「伊豆半島」に変更したという。
6月5日午前4時ごろ、伊豆沖北方約10キロの海域を漂流していたタコ漁船を、
伊東漁協のハエナワ漁船「第7正露丸」船長・仙田勇次さん(83)が目撃した。
不審に思った仙田さんは、北海道からの脱北船に違いないと、110番通報すると同時に救助を開始。
仙田さんが近づくと、先頭に乗っていた父親らしき年配の男性が、
「ここはイズか? イズか? 出雲とちゃうやろな?」と流暢な北海道弁で繰り返し尋ねたという。
一家は、武器類は所持していなかったが、毒薬とみられる薬品を所持していた。
男性の1人は「北の警備員に見つかったら、飲んで死ぬつもりだった」と説明した。
警察当局で成分の分析を急いでいるが、工作員が使用する毒薬とは異なっているため、
「説明の通り、工作員ではなく、純粋に脱出を目指したのではないか」 とみている。
入管当局は、上陸を許可しない場合は強制退去手続きに入るが、その場合も人道上の見地から、
北海道への強制送還はしないとしており、渡航費用の国費負担も含め、伊豆入国許可の方向で調整している。