●2006年1月2日:イノシシの品種改良
少し気が早いけれど、2007年の干支はイノシシ。野山を縦横無尽に駆け巡り、農作物を荒らし回る無法者。
指名手配もなんのその、ご意見無用のお尋ね者、アウトロー街道をまっしぐら。
伊豆天城山のボニー&クライド、俺たちに明日はない!
そんな暴れ者のイノシシに、地元の農家は困り果てていた。農作物の被害はもとより、下校途中の子供を誘拐するわ、若い女性をナンパするわ、
とにかくイノシシは村の鼻つまみ者、なちゅらる・ぼーん・犯罪者。
最近は下火になったが「オレオレ・いのしし詐欺」の実行犯として警察が行方を追っている。
おそらく100人を越える老人が詐欺被害にあったという。
手口は、こうだ。
お宅の子供がコーヒーにミルクを入れたいと言っている。はあ?
至急、新鮮なミルクを振り込んでくれ!
は?
こうした悪質な手口によって多数の老人がミルクを騙し取られた。これを「オレオレ・カフェオレ詐欺」と呼んでいる。
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前フリはこのくらいにして本題に入ろう。
5年前、凶暴なイノシシを益獣に変えてほしいと地元の農協から依頼された。
私はこう見えても「第三世代イノシシ品種改良委員会」の顧問なんです。
天城名物イノシシの改良に取り組んで5年の歳月が過ぎた。長く険しい道のり。
その間、危険物取扱主任の免許も取得した。
2006年新春。ついにイノシシの品種改良に成功した。イノシシとサラブレッドの交配種「いのブレッド」を誕生させたのだ。
いわゆるハイブリッドである。走りがいい、燃費がいい、家計にやさしいイノシシ。
そのまま食べることもできる。ヤマザキの食パン「いのブレッド」。
新発売! 超芳醇いのしし風味の食パン!
もれなく白い小皿をプレゼント!
しかし、こんなことで満足する私ではない。新たなハイブリッド種を誕生させるべく臨床実験をつづけた。
韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授と組んで、
胚性幹細胞(ES細胞)を利用したイノシシ・クローンを誕生させたのだ。
イノシシ+井上さん=「イノうえさん」。農作物を荒らし回った無法者のイノシシが、穏和な「イノうえさん」に生まれ変わった。
市役所勤務35年。無遅刻・無欠勤。まじめなお父さん。趣味:盆栽・ボウリング。
保険年金課課長を最後に定年を迎え、楽しい老後を待ちわびる「イノうえさん」。
独り暮らしの老人のために雪下ろしや田植えを手伝う「イノうえさん」。
独り暮らしの熟女のために、いろんなコトを手伝う「イノうえさん」。
今年3月の定年退職を機に「イノうえさん」は青年海外協力隊に参加して、
はるかブラジルに渡り農業指導をしたいと考えている。おもにシイタケ栽培。
そして、旧型の第二世代ハイブリッド・イノシシに会いたいと願っている。
日系ブラジル人との世界を越えた交配種「あんとにお・イノき」。
かくして暴れん坊将軍だった天城のイノシシは生まれ変わった。山麓の村々に平和が戻った。人々に笑顔が戻った。
ぴーす♪
来年の箱根駅伝に向けて、正月も休みなしで、走り込んでいる「猪豆大学・EKIDEN部」の選手たち。
注)ひときわ長身のイノシシは「きりん・イノシシ」である。