9月11日:秋庭




初雪葛の薄桃色の花びらが、濃緑と劇赤のイタリアン唐辛子を、静かな口調で諫めている。

その不穏当な楽天色は、何事か。

静かな季節に不似合いなこと、この上ない。

滋養満点の九月の油かすと、疲労回復の決め手・腐葉土の養分を吸収したら、

とっとと摘まれて、この秋庭から去るがいい。


元々、白一色で染め上げられるべきコンセプトの白庭に、

お前たちのような緑と赤なんぞの脳天気な色彩はそぐわないのだ。

イタリアンカラーが闖入すること自体おこがましい。

これからの季節は、風の白と、月光の白と、吐息の白が、この庭を染めるだろう。

唐辛子よ、食卓の劇辛薬味として生涯を全うせよ。

あばよ。




我が家の守護神・ラッキーキャット。

巨木になりすぎて、庭全体に陰惨な影をつくり、未来のある若き植物の成長を妨げ、

見るに堪えない労咳色の枯葉を大量にばらまくハナミズキ。

昨年、主人の逆鱗に触れ、無惨にも伐り斃された名残りの場所に据え付けられた招き猫。

否応なく伊豆高原の四季を見守るハメに。


伊豆移住記念樹ハナミズキ(1996年4月植樹)は、我が家のグラウンド・ゼロ。




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