まえ  つぎ 日記INDEX

2005年5月1日 この素晴らしき世界

さ、きょうから5月だ。

伊豆高原はクルマがいっぱい。町へ出る道路は、渋滞渋滞また渋滞。

近所の別荘からは遊びに来た孫たちのカン高い声が聞こえる。

きゃー!! おばあちゃん、ムシ、ムシ! 踏んづけていい? ←お前は、G・馬場か?

おじいちゃん、あの花、食べてもいいかな? ←食虫植物かい! ←逆じゃん! ←2段ボケ


普段はくすんだ色合いの洗濯物しか並ばない物干し竿には、

孫たちのカラフルなTシャツや小さな下着がずらり。洗濯物まで華やいで見える。

きっと、おばあちゃんが浮き浮きしながら洗ってくれたんだろうな。

笑顔が絶えない老人と孫の大型連休。ほんとうに楽しそうだ。

午後、垣根の手入れをしていたら、小学生のタカちゃんに会った。

棒キレを持って草むらをつついている。見るからにヒマそうだ。

タカちゃん、ナニしてんだよ? 

あ、うーさん! や、ただ遊んでただけ。

おじいちゃんは、どこかに連れってくれないのか?

あさってから韓国に行くって。

お、いいじゃん! 本場の焼肉を食べて来いよ。さらんへよ♪

違うモン! おじいちゃんが、ひとりで行くんだもん!

あれま。そりゃまたクールな老人やね。

まあな。

じゃ、おばあちゃんは? 遊びに連れてってくれない?

連休中はどこも込んでるから、そんなトコに出かけるのはバカだって。

これまたクールやね。いや、一概にそうとも言い切れないぞ。

だよね?

伊豆は観光客の皆様でモッてるわけで、たくさんの人に来ていただかないとね。

いま、おばあちゃんは絵を描いてる。膝が痛いから外に出たくないって。

あれま。

オレ、どこにも行かない。つまんねー大型連休さ。ふて腐っちゃう。グレるかも!

そうか。じゃ、そのへんの木陰でお話を聞かせてやろうか?

やった! うーさん、たっぷり頼むぜ。

そんなわけで本日は映画のお話でございます。

先日、衛星放送で放映された「この素晴らしき世界」

観るのは3回目だろうか。チェコの映画なんですけどね。ぐっど、ぐっど、ぐっど♪

飄々とした人間賛歌というか、滋養あふれる手作りスープの味わいというか、

ストーリーは深刻なんだけど、決して暗くなく、重くもなく、軽妙。

こういう映画、好きです。

チェコ版「ライフ・イズ・ビューティフル」かな。

1943年、第二次大戦中のチェコ。

タカちゃん、チェコったって寅さんの妹じゃないぜ。←倍賞チェコかい!(by タカちゃん)

東ヨーロッパにある小さな国だ。ここまでは、いいな?

ナチス占領下にある小さな町にヨゼフとマリエという夫婦が住んでいた。

戦争で職を失ったヨゼフは、子宝にも恵まれず、すっかりやる気をなくしている。

そんな時、二人の家にポーランドの収容所を脱走した、

ユダヤ人青年ダヴィドが逃げ込んできたわけよ。

彼はかつてヨゼフと親しく付き合っていた富豪のユダヤ人一家の息子だ。

悩んだ末にダヴィドを家に匿うヨゼフだったが、

この家には妻マリエに下心を抱くナチスシンパの友人ホルストが頻繁にやって来る。

人妻マリエとあわよくばエッチしたいもんだから、あれやこれやとアプローチしてさ。

そのうちホルストは夫婦の不自然な態度に疑いを抱きはじめる。どうも、怪しい!

ホルストにユダヤ人を匿ってることを知られたら、えらいことだ。

そこでヨゼフは嫌っていたナチスへの協力を装うことにした。

町の人は、そんなヨゼフに嫌悪の目を向け、ツバを吐きかける。

「この素晴らしき世界」は、チェコがナチス支配から解放されるまでの厳しい歳月と、

人々が生き抜いてゆく姿を、笑いと涙をまじえて描いている。

戦争の愚かさを鋭くとらえ、敵、味方を隔てることなく、

おかしくて哀しい人間の行為をやさしく慈しむように描いた映画である。

で、うーさん、ヨゼフとマリエはどうなったの?


そうこうするうちに2年の歳月が流れ、ドイツ軍は敗色濃厚、連合軍のチェコ解放も近い。

ナチス協力者のホルストは、あわてまくってさ。

戦争中、ユダヤ人の豪邸に住んでいたナチスの親分も、その家から逃げ出すはめに。

で、ヨゼフの家に匿ってくれと。図々しいだろ?

そんなわけにはいかない。だって先客のユダヤ人が隠れてるんだもん。

困ったヨゼフは、とっさにウソをつく。

妻マリエがまもなく出産するんです。子供部屋が必要なんです。ごめんなさい。

でも、ヨゼフは「無精子症」だった。マリエを妊娠させることは不可能だ。

うーさん、無精子症って、ナニ? by タカちゃん

筆無精って字に似てるよね。手紙を書けよ。by うーさん

友人ホルストもそれを知っている。マリエが妊娠するわけないだろ、ウソこくな!

いや、マリエは、ほんとに妊娠したんだよ。

んなわけねーだろ! ナチスの軍医がお前は「無精子症」だと断定したはずだ。

さあ、大変です。何とかしてマリエを妊娠させなければ。

解放が近いと言っても、まだ町にはナチスがうようよしている。

ウソがバレれば殺されるかもしれない。

お、そうだ。ひとつだけ方法がある! 

屋根裏に2年も隠れているユダヤ人青年ダヴィド。彼に頼もう。

みんなのためだ。これしか方法がないんだ。何としても生き抜こう!

妻マリエとダヴィドは、ヨゼフのアイデアにしぶしぶ承知する。

しかし、ダヴィドは2年間も隠し部屋にいたのでパワーがない。へろへろ。

妻マリエは色っぽい化粧をして誘う。いやーん、うふーん♪ そして合体!

ヤッたんかい? by タカちゃん

まあな by うーさん

めでたく妊娠。やがて産気づく。大きなお腹、苦しがるマリエ。

と、そのとき! 町は歓声に包まれた。ついに連合軍がやってきたのだ。

残ったナチスや協力者は次々と逮捕される。もちろんホルストも。

解放の喜びに沸くチェコ、浮かれ騒ぐ人々、長い長い戦争は終わった。

そのとき! ひときわ大きな叫び声が。

うんぎゃーーーー!

マリエが破水したのだ。産婦人科の医者は? 誰か、誰か、マリエを助けてくれー!

ヨゼフは町中を走り回り、医者を探すがどこにもいない。

このままではマリエも赤ちゃんも死んでしまう。どうしよう? どうしよう?

近所の産婆さんは爆撃で死んだ。と、ヨゼフは思い出した。産婆が言ったことを。

ホルストは子供を取り上げたことがあるんだよ、器用だねぇ♪

ヨゼフは連合軍の司令所に走る。逮捕されたホルストを返してほしい。

確かに彼は裏切り者です。ナチスのシンパでした。でも、でも、僕の友人なんだ。

ホルストは子供を取り上げることができるんだ!

ラストシーンでマタイ受難曲のアリア「神よ、憐れみたまえ」が流れる。

聖なる子を産んだマリエは、マリアの象徴。

ヨゼフが赤ちゃんを抱いて、荒れ果てた町をゆっくり歩いていく。

生まれたての希望を抱きしめて。

べいびー、この素晴らしき世界へ、ようこそ。

監督ヤン・フジェベイク 脚本ペトル・ヤルホフスキー 出演ボレスラフ・ポリーフカ他

原題「手を携えよ、さもなくば滅びん」


しゃべりすぎてノド渇いたから、タカちゃん、缶コーヒーでも買って来いよ。

買って来てもいいけど、うーさん、お金。

なんだよ、その手は? お前が出せよ。いい話を聞いたんだろ。お礼しなさい。

ちっ、しょうがねーなー。いつものでいい?

ああ、頼むぜ。

私とタカちゃんは、冷たい缶コーヒーを飲みながら、5月の空を見上げた。

ウグイスが鳴いている。薄い雲が流れていく。萌える緑が風に揺れている。

タカちゃん、どこへも遊びに行かなくたって、

こういう素晴らしい午後があれば充分だよね。



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